2023 Fiscal Year Annual Research Report
Causal effects of physical activity on health outcomes including dementia among older adults: a proposal of a new instrumental variable
Project/Area Number |
20K18931
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 豪竜 京都大学, 医学研究科, 助教 (20867965)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 引退 / 心疾患 / 身体不活動 / 操作変数法 / 年金支給開始年齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、引退が心血管疾患の発生とそのリスク要因に与える影響について検証を行った。心血管疾患は、多くの先進国において高齢者の死因の第1位である。欧州で行われた研究では、引退と心血管疾患リスクの増加との関連性を認めるものが多いが、米国で行われた研究では、両者の間に関連性はないと結論付けられており、未だコンセンサスが得られていない。さらに、これまでに引退が心血管疾患リスクを引き下げると結論付けた研究はない。しかし、ほとんどの研究は単一国を対象としたものであり、一貫しない結果が調査対象国の違いによるものなのか、研究手法やデザインの違いによるものなのか判別することができない。 このため、米国のHealth and Retirement Studyや欧州のSurvey of Health, Ageing and Retirement in Europe、日本のJapanese Study of Aging and Retirement等の35か国分のデータを利用し、引退が心疾患リスクに与える影響を調べた。健康状態が悪い者ほど早く引退するバイアスが働くため、各国の年金支給開始年齢を操作変数として因果推論を行った。分析の結果、引退は心疾患リスクを2.2%ポイント引き下げることが示唆された。また、引退は身体不活動のリスクを3.0%ポイント引き下げることも明らかになった。既存研究はバイアスに対して適切な対応がなされていないことが多く、因果推論の手法を用いた今回の研究によって初めて引退が心疾患リスクを下げる可能性があることが示された。また、引退は身体不活動の減少とも関連しており、引退を契機とした健康行動の変化が、心疾患リスクに良い影響をもたらした可能性がある。 この結果は、International Journal of Epidemiologyに掲載された。
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