2020 Fiscal Year Research-status Report
大学等の教育・研究者の働き方改革を促進する健康管理に関する調査研究
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20K18932
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 玲子 東京大学, 環境安全本部, 助教 (50553111)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 健康管理 / 教員・研究者 / 働き方改革 / 国際比較 / 産業保健サービス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.大学教員・研究者の健康状況についてレビューすることを目的とした調査:教員・研究者に言及した観察研究は少なく、最終的に36件(横断研究32件、縦断研究4件)がレビュー対象となり、身体健康(全般的な身体不調感、筋骨格系障害/不快感、眼精疲労、疲労感、睡眠不調)10件、精神健康(well-being、精神不調、バーンアウト)20件、両方の健康状況を取り扱っている研究が6件だった。 2.労働者側の教員・研究者の両者に、2020年1月以降の新型コロナウイルス感染症への大学等の対策により、大学での活動再開後(活動再開・感染症対策継続後)の働き方と健康状況について尋ねるWeb質問紙調査を、研究代表者が所属する大学にて2020年12月にパイロット調査を行った。教員・研究者の2割前後は、男性/女性とも理想的在宅勤務環境があったと仮定しても、出勤勤務を希望していた。健康状態や業務効率の観点では、男性VS女性 教員・研究者で、睡眠時間増加(17.9%VS29.0%)、出勤勤務時比較の在宅勤務時業務効率向上(21.8%VS31.0%)と、女性で改善割合が高かった。感染症対策の一環で、急速に在宅勤務導入され、自宅勤務環境が整わないまま仕事をすることになった者もおり、教員・研究者はそれ以外の群と比較して、人間工学的に推奨される「机・椅子」等の良い環境を調整している割合が高かった。在宅勤務を過去3か月に1度以上行っている対象者に限ると、労働生産性については、教員・研究者とそれ以外の職種で明らかな違いを認めなかった。性・年齢・同居者・職種・労働時間管理・実労働時間・在宅勤務頻度 を調整したうえで、自宅勤務環境の推奨方法の実施数が多いこととの関連を分析したところ、仕事のパフォーマンスが高いこと、労働機能障害が低いこと、主観的な在宅勤務時の業務効率が「改善」したことと有意な関連を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、調査の対象が、事業場側の大学等と労働者側の教員・研究者である。調査対象および調査協力を得る対象である、各大学の人事部門や産業保健サービス提供部門(主に保健センター等)は、2020年度、新型コロナウイルス感染症流行により感染症対策の中心的枠割を果たすために業務多忙であり、本研究の協力を得ることが難しく、初年度の調査協力の調整が予定通り進まなかった。そのため、研究協力を得る時期を1年以上延期して、2021年度に改めて調整し、2022-2023年度の複数大学での調査実施や分析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度パイロット調査を基に、今後以下の調査を実施していく予定である。 1. 事業場側の大学等と労働者側の教員・研究者の両者に、教員・研究者の労働定義と彼らの健康管理に必要な大学等の施策や産業保健サービスのニーズ調査実施:全国大学保健管理協会の協力を得て、加入大学(505大学)から研究参加大学募集する。◆大学等調査:2021年度 ①大学等の産業保健スタッフ ②大学等の人事担当者への、フォーカスグループインタビュー、デルファイ法よる質問紙調査、ヒアリング調査 ◆大学労働者調査:2022年度~2023年度 参加協力を得た各大学等の定期健診の機会に、大学労働者に研究協力依頼し、Web/紙の質問紙にて勤務・健康状況・産業保健サービスのニーズ調査実施。別途各大学等から提供を受ける定期健康診断結果(法定項目の健診データや問診票のうち現病歴・既往歴や生活習慣等の内容と突合する。多くの大学において健診データ提供に同意が得られない場合には、質問紙調査のみ実施する。 2.事務職員と比較した教員・研究者の「働く上での健康」の阻害/促進要因についての横断/縦断調査:上記1の調査で得たデータを用いて、本人の健康状況に影響を及ぼしている可能性がある要因の探索を行う。 3. 事業場側の大学等と労働者側の教員・研究者の両者に、2020年1月以降の新型コロナウイルス感染症への大学対策による働き方変化と健康影響について尋ねるWeb質問紙調査。 4.海外の大学等の教員・研究者の働き方及び健康管理との比較:大学教員・研究者の労働実態とその労務管理や大学産業保健サービスについて、事前文献調査と、海外大学や研究所等における人事部門AND/OR産業保健部門へのヒアリング調査実施。
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Causes of Carryover |
本研究は、調査の対象が、事業場側の大学等と労働者側の教員・研究者である。調査対象および調査協力を得る対象である、各大学の人事部門や産業保健サービス提供部門(主に保健センター等)は、2020年度、新型コロナウイルス感染症流行により感染症対策の中心的枠割を果たすために業務多忙であり、本研究の協力を得ることが難しく、初年度の調査協力の調整が予定通り進まなかった。そのため、研究協力を得る時期を1年以上延期して、2021年度に改めて調整し、2022-2023年度の複数大学での調査実施や分析を行う予定である。また、新型コロナウイルス感染症に伴う大学の感染症対策の方針で、出張を伴う学会参加・研究打ち合わせや実地調査を行うことができず、その分の経費を翌年分に繰り越した。 繰り越した経費は、調査準備の文献検索やWebページ構築代、オンラインでの調査打ち合わせやヒアリング調査のためのWebサービス利用費用、論文作成に伴う英語校正費用や投稿費用、等に使用する予定である。
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