2021 Fiscal Year Research-status Report
大学等の教育・研究者の働き方改革を促進する健康管理に関する調査研究
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20K18932
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 玲子 東京大学, 環境安全本部, 准教授 (50553111)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 健康管理 / 教員・研究者 / 働き方改革 / 産業保健サービス / ヘルスリテラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、以下を実施した。 大学教員・研究者を含めて大学で雇用されている者を対象に、2020年1月以降の新型コロナウイルス感染症への大学等の対策(感染症対策と大学の研究教育運営活動継続の両立)下での働き方の実際と健康状況について尋ねるWeb質問紙調査のうち、3回目調査を、計3回繰り返し行った。調査対象は、研究代表者が所属する大学で雇用されている者、調査時期は、2020年12月調査(T1)、2021年3月(T2)、2022年3月(T3)、の計3回実施した。 直近3ヶ月の在宅勤務/出勤勤務の程度は、調査時期の感染症流行状況・それに応じた対策強化・緩和状況により影響を受けた結果と考えられた。しかし、いずれの時期でも、教員・研究者の2割前後は、理想的在宅勤務環境があったと仮定しても、出勤勤務を希望しており、その他の職種(主に事務職員)と比べると、その割合は高かった。もともと教員・研究者の大半は労働契約が(専門型)裁量労働制であり働き方の裁量がその他の職種より大きいため、新型コロナウイルス感染症対策により暫定的に在宅勤務が認められたことで、働く場所も含めて業務内容により働き方を自ら決めるという裁量を再認識したことや、自身の裁量で勤務場所について実効的な感染症対策を講じやすいこと、ラッシュを避けた通勤時間帯の設定がしやすいこと、等が、在宅勤務/出勤勤務に関する希望にも反映されていると考えられる。 感染症対策に伴う在宅勤務時の作業環境やコミュニケーション低下に伴って出ると想定される症状について、有無と業務上支障があるかどうか尋ねたところ、調査対象期間中在宅勤務を一度も行っていない者と比較して、在宅勤務環境(机と椅子/ローテーブル/その他)により症状の頻度が高く、勤務環境により症状頻度に違いが出た。健康管理において、他の職種と同様に、ヘルスリテラシーを高める情報提供が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、調査の対象が、事業場側の大学等と労働者側の教員・研究者である。調査対象および調査協力を得る対象である、各大学の人事部門や産業保健サービス提供部門(主に保健センター等)は、2020年度に続き2021年度も、新型コロナウイルス感染症流行により感染症対策の中心的枠割を果たすために業務多忙であり、本研究の協力を得ることが難しく、初年度から引き続き調査協力の調整が予定通り進まなかった。 そのため、研究協力を得る時期を延期して、2022年度前半に改めて調整し、2022年度後半-2023年度の複数大学での調査実施や分析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020-2021年度パイロット調査を基に、今後以下の調査を実施する予定である。 1.パイロット調査から得られた、柔軟な働き方を実施する上での「働く上での健康」阻害/促進要因分析結果に基づく、セルフマネジメント用ツール作成。 2. 事業場側の大学等と労働者側の教員・研究者の両者に、教員・研究者の労働定義と彼らの健康管理に必要な大学等の施策や産業保健サービスのニーズ調査実施:全国大学保健管理協会の協力を得て、加入大学(約500校)から研究参加大学募集 ◆大学等調査:2021年度 ①大学等の産業保健スタッフ ②大学等の人事担当者への、フォーカスグループインタビューやデルファイ法による質問紙調査、ヒアリング調査 ◆大学労働者調査:2022年度~2023年度 参加協力を得た各大学等の定期健診の機会に、大学労働者に研究協力依頼し、Web/紙の質問紙にて勤務・健康状況・産業保健サービスのニーズ調査実施。別途各大学等から提供を受ける定期健康診断結果(法定項目の健診データや問診票のうち現病歴・既往歴や生活習慣等の内容と突合する。多くの大学で健診データ提供に同意が得られない場合には、質問紙調査のみ実施する。 3.事務職員と比較した教員・研究者の「働く上での健康」の阻害/促進要因についての横断/縦断調査:上記2の調査で得たデータに基づき、本人の健康状況に影響を及ぼしている可能性がある要因の探索。 4. 事業場側の大学等と労働者側の教員・研究者の両者に、2020年1月以降の新型コロナウイルス感染症への大学対策による働き方変化と健康影響について尋ねるWeb質問紙調査。 5.海外の大学等の教員・研究者の働き方及び健康管理との比較:大学教員・研究者の労働実態とその労務管理や大学産業保健サービスについて、事前文献調査と、海外大学や研究所等における人事部門AND/OR産業保健部門へのヒアリング調査実施。
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Causes of Carryover |
1)2021年度質問紙調査で利用した質問紙のライセンス利用料金の支払い時期が、支払い手続きの事務処理のタイミングにより、2022年度分で計上されているため。 2)本研究は、調査の対象が、事業場側の大学等と労働者側の教員・研究者及びその他の職種(比較用)である。調査対象および調査協力を得る対象である、各大学の人事部門や産業保健サービス提供部門(主に保健センター等)は、2020年度に続き2021年度も、新型コロナウイルス感染症流行により感染症対策の中心的枠割を果たすために業務多忙であり、本研究の協力を得ることが難しく、初年度から引き続き調査協力の調整が予定通り進まなかった。そのため、研究協力を得る時期を延期して、2022年度前半に改めて調整し、2022年度後半-2023年度の複数大学での調査実施や分析を行う予定である。また、新型コロナウイルス感染症に伴う大学の感染症対策の方針で、出張を伴う学会参加・研究打ち合わせや実地調査を行うことができず、その分の経費をさらに翌年分に繰り越した。 繰り越した経費は、調査準備の文献検索やWebページ構築代、オンラインでの調査打ち合わせやヒアリング調査のためのWebサービス利用費用、論文作成に伴う英語校正費用や投稿費用、等に使用する予定である。
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