2023 Fiscal Year Research-status Report
大学等の教育・研究者の働き方改革を促進する健康管理に関する調査研究
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20K18932
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 玲子 東京大学, 環境安全本部, 准教授 (50553111)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 健康管理 / 教員・研究者 / 働き方改革 / 産業保健サービス / ヘルスリテラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度に, 全国の大学等の産業保健サービス提供部門宛に質問紙調査を行なった。計1118校に調査票を送付し, 返送数は25.8%, 有効回答23.3%だった。 内訳は, 大学208校(全施設の1/4), 短大49校(同1/6), 設置区分別では, 国立19.5%, 公立14.9%, 私立64.0%で, 定期健診対象教職員数は50-299人が約5割で最多だった。6割で外部非常勤医師のみを産業医選任し, 1/4に産業看護職は不在で, 1割で衛生管理者・衛生推進者が非選任で、6割で学生健康管理部門が産業保健実務を主に担当していた。教職員数が少ないほど産業保健サービス資源が限られていた。 大学等の産業保健活動実態の現状を25の選択肢で尋ね, 特定の属性の健康管理に関連した対応[高年齢労働者, 障害者, 家庭内ケア責任多い労働者, 女性や性的マイノリティ, 外国人労働者, 兼業・副業を行う者]や, テレワーク増加に伴う健康管理, 化学物質の自律的管理移行に伴う健康管理は, 「あまり/まったく実施していない」の回答が多かった。 兼業・兼務の労働時間把握していない/長時間勤務者の把握に労働時間の情報使用していない大学等は, 教育・研究者20.7%/18.8%, 職員(管理職)35.2%/10.3%, 職員(管理職以外)34.9%/6.1%だった。2019年働き方改革法施行前後の長時間勤務者の医師面接数は「ほぼ変わらない」が7割だった。COVID-19 pandemic下のBCPに伴う働き方変更の影響が, 現在の恒常的な働き方改革要素に維持されている度合いは、0(全く維持されていない)-10(全部維持されている)で尋ねたところ, 平均3.8点, 中央値3点だった。 多くの大学等で, 産業保健サービスの資源が限られ, 働き方改革に対応した産業保健サービスの提供に課題があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は, 研究計画当初の調査想定対象が, 事業場側の大学等と労働者側の教員・研究者であった。2020年度~2022年度に関しては, 各大学の人事部門や産業保健サービス提供部門(主に保健センター等)が, 新型コロナウイルス感染症流行により感染症対策の中心的枠割を果たすために業務多忙であり本研究の協力を得ることが難しく, 初年度から引き続き調査協力の調整が予定通り進まなかった。 しかし, 2023年度には, 各大学の人事部門や産業保健サービス提供部門(主に保健センター等)に対して, ● 2019年度の働き方改革法施行後の健康管理施策への影響, ●2020年にパンデミックとなり2023年5月上旬に5類化した新型コロナウイルス感染症対策に伴う一時的な働き方の変更が, 引き続きどの程度定常的な働き方改革の一部として移行し継続しているか, 合わせて調査を行なうことができた。 不測の事態による調査計画の遅れのため, 研究年度を1年延長して, 2024年度も研究を継続していく。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は, 2023年度に質問紙調査の協力を得られた大学等の産業保健サービス提供部門で、あらかじめ今後のインタビュー調査等に協力意向を回答してくれた大学に対して、インタビュー調査やフォーカスグループインタビュー等を予定している。 また、別途教職員に対する調査として, 協力を得られた大学について、当該大学の産業保健サービスを提供している部門を通して、 所属教職員への質問紙調査等の実施を予定している。. また、研究協力が充分な数の大学から得られない場合は、インターネットモニター調査の利用も検討している。
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Causes of Carryover |
前述の通り本研究は、 調査対象および調査協力を得る対象である各大学の人事部門や産業保健サービス提供部門(主に保健センター等)が、2020~2022年度で新型コロナウイルス感染症流行により感染症対策の中心的枠割を果たすために業務多忙であり、本研究の協力を得ることが難しかったため、全体的に研究計画の実施の遅れが生じている。そのため、上記機関に予定していた予算執行の大部分ができなかった。 研究協力を得る時期を延期して、2023~2024年度に複数大学での調査実施や分析を行っており、出張を伴う学会参加・研究打ち合わせや実地調査の経費を翌年分に繰り越した。 繰り越した経費は、 引き続き調査に関するWebページ構築代, オンラインおよび対面での調査打ち合わせやヒアリング調査のためのWebサービス利用費用や旅費、調査協力が充分得られなかった場合はインターネットモニター会社への調査費支払い、その他、論文作成に伴う英語校正費用や投稿費用、等に使用する予定である。
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