2021 Fiscal Year Research-status Report
横断研究によるMMSEを用いた認知機能とヒ素の関連について
Project/Area Number |
20K18939
|
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 春満 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (60755122)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 認知機能 / バングラデシュ / 生活習慣 / 社会経済的要因 / 聴覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
バングラデシュではベンガル語の識字率は72.9%と高くない。バングラデシュの文化に合わせた認知機能検査としてバングラデシュ版ミニメンタルステート検査が開発され、それを用いて前回の調査で、生活習慣、社会経済的要因と認知機能検査をKishorgonj地区で65歳以上高齢者に対して行った。このデータを用いて、生活習慣及び社会経済的要因と認知機能低下との関連について解析を行った。65歳以上で脳卒中、パーキンソン病の既往のない314名が解析対象となった。説明変数として、以下の項目を使用した。自己申告による喫煙状況、聴覚(正常、悪い)、嗅覚(正常、感じにくい、悪い)、社会経済的要因として婚姻状況、就業状況、高血圧と糖尿病の服薬状況、身体測定として身長、体重、血圧を用いた。高血圧は収縮期/拡張期血圧≧140/90mmHgか服薬ありとし、識字は1年以上教育歴があるものとした。ミニメンタルステート検査が21点未満のものを認知機能低下とし、目的変数とした。多変量ロジスティック回帰分析を用いて認知機能低下との関連を調べた。結果、参加者の平均年齢は72.5歳、識字率は、男性で23.6%、女性で5.9%であった。聴覚が正常な者と比し、聴覚が悪いと回答した者は、認知機能低下のオッズ比が1.94倍有意に高かった(95%信頼区間:1.08-3.47)。同じモデルで、年齢が5歳増す毎に、独立して認知機能低下と関連が示された(オッズ比:1.31、95%信頼区間:1.12-1.53)。以上のことから、本研究で、バングラデシュの地方に住む地域住民において、聴覚が悪いことと高齢であることが認知機能低下と関連が認められた。 追加の調査として、National Heart Foundation & Research Instituteにおいて、現在倫理申請を行っている。生体中のヒ素、血液検査などの追加検査を予定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの世界的な感染状況が改善されないため、計画に遅延が発生している。バングラデシュでもコロナウイルス蔓延防止のために、都市部においてロックダウンが行われていた。そのため、検査機関に質問をした場合でも返事の遅延などが起こり、交渉を進めるのが難航した。日本からも海外への渡航が規制されており、現地での活動ができない状況であったことも計画が遅れている理由の一つである。新型ウイルスに対するワクチンの普及などにより、制限が徐々に解除されつつあり、本研究課題の進捗状況も改善されると想定される。現在、研究協力機関であるNational Heart Foundation & Research Instituteで倫理申請を行っている。英語版での研究計画書など必要書類を提出したが、倫理審査委員会から、ベンガル語版も提出するように要請があり、現地研究協力者が翻訳作業に従事している。ヒ素の測定機関も交渉を行い、追加調査の準備が進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現地の研究協力機関において、倫理申請の許可がおり次第、調査地域における活動を予定している。前回参加者に生活習慣及び社会経済的要因の質問指標及び追加情報として、バングラデシュの地下水のヒ素の研究で用いられていた食品摂取頻度調査と尿、爪などの生体試料の採取、血液検査などを進めていく予定である。今回の解析結果として、自己申告による聴覚と認知機能低下との関連がみられたため、オージオメーターを用いた聴覚検査を検討している。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスが世界的に蔓延していたため、研究参加者を医療機関に集めて調査をするのが難しかったため。ワクチンの普及や制限が緩和されてきたことから、今年度は調査を行い、研究計画の遅れを取り戻せる予定である。
|
Research Products
(4 results)