2021 Fiscal Year Research-status Report
RSウイルスが地域内で伝播するメカニズムに関する研究
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20K18955
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
乙丸 礼乃 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (00849416)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | RSV / social mixing pattern |
Outline of Annual Research Achievements |
RSVの主な伝播様式は接触感染が主であると考えられ、空気感染は少ないとされる。保育園等や高齢者施設等での集団感染が問題となる。本研究では、フィリピンなどでRSV感染伝播の危険因子および各年齢層の地域流行拡大への寄与について明らかにすることを目的とする。 方法論の確立のため、新型コロナウイルス感染症のデータとフィリピンで実際に導入された社会的距離への介入策を考慮した感染伝播に関するモデルを作成し、解析を行った。社会的距離に関連する変数には、過去にフィリピンで人口動態統計などをもとに推定された平均接触回数を用いた (Prem K et al., PLoS Comput Biol)。具体的には、都市封鎖に入る前の接触パターンに対し4つの介入策 ((i) ベースラインシナリオ:社会的距離への介入なし、(ii) ECQ:職場の80%および学校閉鎖、(iii) GCQ:職場の40%および学校閉鎖、(iv) SSD:職場の30%の閉鎖および大学の閉鎖) を組み合わせた12のシナリオの実施を想定した。先行研究から得た疫学的パラメータと、シナリオを組み入れたSEIRモデルを用い、必要とされる集中治療室病床 (ICU) および死亡者数を含む流行規模を推定した。ECQの終了後ウイルスがまだ国内に存在しているか、再輸入される状況で介入が完全に緩和されるシナリオと、ベースラインシナリオでは、ピークの時期を除き疾病負荷はほぼ一致していた。介入の段階的緩和は、より多くの社会的・経済的混乱を引き起こし、介入の少ない他のシナリオと比較し流行が長期化する可能性が高いが、ICUなどの医療資源の枯渇を避けるために重要であると考えられた。RSV感染症においても、社会的距離への介入が流行に影響している状況にあるため、これを考慮した解析が必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フィリピンで追加データを収集することを予定した研究であったが、新型コロナウイルス流行に伴う渡航制限により、断念せざるを得ない状況が続いている事による。
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Strategy for Future Research Activity |
RSV感染症の症例数も他の感染症と同様、社会的接触への介入により大幅に減少したが、介入の緩和に伴い世界各国で流行が再開している。また、これまでにRSVの新規変異株の出現が流行動態に影響を及ぼすことが報告されている。これらのことを踏まえた疫学的情報の収集およびRSVの分子疫学的特徴の変化に焦点を当てて解析をしていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行に伴う渡航制限および検体輸送の制限により、新規検体や疫学データの収集に関する海外渡航および打ち合わせなどが実施できなかったために次年度使用額が生じた。次年度では引き続き新規検体や疫学データの収集に向けて計画を修正しながら、これまで得られているデータと検体をもとにした解析を実施する予定である。
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[Journal Article] Risk of Transmission and Viral Shedding From the Time of Infection for Respiratory Syncytial Virus in Households2021
Author(s)
Hirono Otomaru, Johanna Beulah T Sornillo, Taro Kamigaki, Samantha Louise P Bado, Michiko Okamoto, Mariko Saito-Obata, Marianette T Inobaya, Edelwisa Segubre-Mercado, Portia P Alday, Mayuko Saito, Veronica L Tallo, Beatriz P Quiambao, Hitoshi Oshitani, Alex R Cook
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Journal Title
American Journal of Epidemiology
Volume: 190
Pages: 2536-2543
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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