2020 Fiscal Year Research-status Report
胎盤重量/出生体重比と小児期生活習慣病リスクの関連性
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20K18963
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
滿田 直美 高知大学, 医学部, 特任助教 (30611389)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エコチル調査 / 胎盤重量 / 胎盤重量/出生体重比 / 喫煙 / ヘモグロビン / 貧血 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、計画通りエコチル調査で得られているデータを用いて、母体因子と胎盤重量、胎盤重量/出生体重比(PW/BW比)の関連性について統計解析を行い、胎盤重量やPW/BW比が胎内環境を反映するマーカーであることが示唆されるかどうか評価した。 まず、妊娠中の喫煙と胎盤重量、PW/BW比の関連性について解析した。妊娠中に喫煙を継続していると、出生体重は軽く、胎盤重量は重く、PW/BW比は大きくなることが示された。また、妊娠中喫煙を継続している妊婦の中では、喫煙本数が多くなるほど、胎盤重量は重く、PW/BW比は大きくなっていた。PW/BW比が高くなる機序のひとつとして、子宮内や胎盤内の低酸素や低栄養に対する代償性肥大が推測されている。たばこの毒性や喫煙により引き起こされる子宮内の低酸素状態により、胎児の成長抑制や胎盤の代償性肥大が起きている可能性が考えられる。 妊娠初期~中期のヘモグロビンの値と胎盤重量、出生体重、PW/BW比の関連性についても解析した。母体ヘモグロビン値と胎盤重量との間にはU字型の関係が、母体のヘモグロビン値と出生体重との間には 逆U字型の関係が、母体ヘモグロビン値とPW/BW比の間にはU字型の関係がみられた。ヘモグロビン低値は、胎盤と胎児の低酸素につながる。高すぎるヘモグロビン濃度もまた、血液粘度の上昇に伴う胎内の低酸素、不十分な循環血漿量の増加と関連していると考えらる。両者ともに、胎児の成長抑制と胎盤の代償性肥大につながり、ヘモグロビン値とPW/BW比の間にU字型の関係性がみられたのではないかと考えられる。 以上の解析結果から、妊娠中喫煙していない妊婦、ヘモグロビン値が適正な範囲にある妊婦でPW/BW比が低くなっており、PW/BW比が低いことは効率のよい胎盤、つまりよりよい胎内環境を反映していることが示唆された。
これらの解析結果を論文化し、学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに得られているデータをもちいた統計解析は計画通りにできている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究者が所属する高知UC内で行われているエコチル学童期健診において健診業務に携わりながら参加者の学童期における体格、血圧、脂質や糖代謝等の血液検査などのデータを収集し、そのデータと胎盤重量やPW/BW比との関連性を解析予定である。新型コロナウイルス感染症流行により学童期健診が当初の予定通りには行えていないため、サンプル数は当初計画していたほどには集まらない可能性が高いが、集められた範囲内で解析予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウイルス感染症流行に伴い、学会出張がなかったため、出張旅費を使用していない。次年度は学会出張も予定している。
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