2020 Fiscal Year Research-status Report
労働者の特性に合わせたジョブ・クラフティング促進プログラムの開発と効果検討
Project/Area Number |
20K18969
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
櫻谷 あすか 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (70845461)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジョブ・クラフティング / 労働者 / メンタルヘルス / ワーク・エンゲイジメント / 心理的ストレス反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、労働者の特性に合わせたジョブ・クラフティング (労働者が自らの仕事のやりがいを高めるために自主的な働き方をすること:以下JC)促進プログラムを開発し、JC促進による労働者の心の健康および生産性増進への効果を科学的に検討することを目的としている。特に、本研究では3種類のJC促進プログラム (作業JC・人間関係JC・認知JC) の開発および効果検討を実施し、次に、そのデータを用いて労働者の特性(性別や年齢、仕事の負担など)に合わせたJCを提案・促進するアルゴリズムの開発および効果検討を行うことを目指す。以上を踏まえ、今年度は、3種類のJC促進プログラム (作業JC・人間関係JC・認知JC) の開発、およびプログラムの効果検討(無作為化比較試験)の実施準備を進めた。 プログラム開発にあたっては、最新のJCに関する文献を網羅的にレビューをしたり、国内外の産業保健の専門家や研究者から意見を収集したり、また、日本の一般労働者に対してJCに関するインタビュー調査を行いJCの事例収集を行った。現在、そこから得られた情報を基にプロトタイプのe-learning版JC促進プログラムを作成中である。今後、本プログラムを完成させ、日本の労働者約30名を対象にプログラムを実施し、理解度・満足度を調査して、修正を加える予定である。 また、プログラムの効果検討(無作為化比較試験)の実施に関しては、具体的には、本プログラム(e-learning)の管理運用のために、管理システムの導入準備(企業との打ち合わせ等)や、宿題対応やメールでのフォロー等を行う研究協力スタッフとの調整、研究協力企業の募集などを進めた。2021年度以降は、引き続きプログラムの開発、および本プログラムの効果検討の実施を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況としては、当初の計画通り、3種類のジョブ・クラフティング(JC)促進プログラム(作業JC・人間関係JC・認知JC) の開発およびプログラム効果検討(無作為化比較試験)の実施準備を進めている。プログラム開発にあたり、研究代表者はJCの最新の知見を取り入れるために、JCの文献レビューを網羅的に行った。また、産業精神保健の専門家から意見を収集したり、一般労働者にインタビューを行い、実際のJCの事例を集めた。続いて、これらの情報をもとに、プログラム内容を作成した。作成中のプログラムは、JCの理論に基づきながら、参加者が3種類のJC(作業JC・人間関係JC・認知JC)を学ぶことができるワーク等が含まれる。今後は、本プログラムを約30名の労働者に実施し、意見を収集しながら、修正を加える予定である。 続いて、本プログラムの効果を検討するための無作為化比較試験の準備も進めている。具体的には、本プログラム(e-learning)の管理運用のために管理システムの導入準備(企業との打ち合わせ等)や、宿題対応やメールでのフォロー等を行う研究協力スタッフとの調整、および研究協力企業の募集などを進めた。2021年度以降は、引き続きプログラムの開発、および本プログラムの効果検討の実施を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に引き続き、3種類のジョブ・クラフティング(JC)促進プログラム(作業JC・人間関係JC・認知JC) の開発を進める。具体的には、作成中の本プログラム(e-learning)を約30名の労働者を対象に実施し、理解度・満足度などを調査して、修正を加える予定である。 次に、本プログラムの効果検討を行う。一般労働者800人を無作為に4群 (作業JC群・人間関係JC群・認知JC群・対照群) に割り付ける。効果指標は、Web上の自記式質問票を用いて、1) ワーク・エンゲイジメント、2)心理的ストレス反応、3)うつ病の罹患、4) 生産性、5) JC得点を測定する。加えて、個人の特性 (性別、年齢、時間選好、価値の種類など) と仕事の特性 (職種、仕事の負担など) も調査する。全研究参加者に対して上記の項目を調査した後 (介入前調査)、介入群の研究参加者のみに本プログラムを提供する (実施期間10週間)。介入前調査から3ヶ月後 (介入直後)、6ヶ月後、および12か月後には、全参加者に対して、効果指標を測定する。各JC促進プログラムの効果としては、全効果指標を従属変数とし、群 (介入・対照) × 時期 (介入前・3ヶ月後・6ヶ月後・12ヶ月後) の交互作用を混合効果モデルにより解析する。加えて、JCを媒介変数とした媒介分析を実施する。 続いて、効果検討により得られたデータを用いて、個々の労働者の特性(性別、年齢、時間選好、価値の種類など)に対して、効果が最大になるJC促進プログラムを提案・促進するアルゴリズムを開発する。方法としては、労働者の特性による3種類のJC促進プログラムの効果の差を推定する(回帰分析、機械学習、ベイズ統計などを比較検討する)。更に、今後のデータ蓄積により、学習しアルゴリズムを改善する強化学習のロジックも実装する。
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Causes of Carryover |
今年度は、プログラム開発(文献レビューや産業保健の専門家とのディスカッション、および一般労働者へのインタビューなど)およびプログラム効果検討準備(企業との打ち合わせや研究協力スタッフとの打ち合わせ)を実施し、支出は生じなかった。その理由として、新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大の影響により、一般労働者の労働環境等が変わったため、2020年度に実施予定であった、日本の一般労働者500名を対象としたWeb上の自記式調査票によるジョブ・クラフティングの事例収集や、本プログラム(e-learning)の本格的な実装を2021年度以降に実施する方向で調整したためである。2021年度以降に、Web調査の実施を行い、一般労働者のジョブ・クラフティング事例を収集する予定である。また、e-learningプログラムの管理運用のための管理システムの導入や、研究協力スタッフ(宿題対応やメールでのフォロー等を行う)への費用に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)