2020 Fiscal Year Research-status Report
DNA鑑定実務に資する人工知能によるアーチファクト自動判定ツールの開発
Project/Area Number |
20K18981
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
眞鍋 翔 関西医科大学, 医学部, 助教 (00794661)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | DNA鑑定 / 法医学 / 人工知能 / アーチファクト / 混合試料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は、DNA鑑定で検出されるアーチファクトを人工知能(AI)に判断させるツールを構築することである。令和2年度はまず、AIでの処理をなるべく単純化させるため、アーチファクト(back stutter、forward stutter、double-back stutter、minus 2-nt stutter、pull-up)のうち、AIに判断させるべきものと人間が構築した数理モデルにより処理が可能となるものを選別できるか検討した。その結果、back stutter、forward stutter、double-back stutter、minus 2-nt stutterについては新たな数理モデルを構築することができたが、pull-upについては、数理モデルの構築が困難であった。この結果より、AIには主にpull-upを判断させるべきという方針を立てることができた。また、新たに構築した数理モデルについては、これまでに開発した事件の被害者や犯人などのDNAが混合した試料を解析するためのソフトウェアに組み入れ、適切にアーチファクトを処理できていることを確認した。 続いて、ツールの構築に必要となるDNA検査データの準備に取り掛かった。まず、検査データの元となる実験試料は、法医解剖に付されたご遺体から採取した血液を用いることとした。また、検査データはPCRのサイクル数、電気泳動装置に影響を受けるため、データを取得するための実験条件を決定した。DNAを増幅するためのPCRのサイクル数は30サイクルとし、電気泳動装置はApplied Biosystems SeqStudio Genetic Analyzer(Thermo Fisher Scientific)を使うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、本研究申請時に所属していた京都大学にある実験試料、電気泳動装置を使用する予定であったが、令和2年7月より関西医科大学に異動となったため、実験試料、電気泳動装置の変更が必要となった。これに伴い、実験計画を変更することとなったため、当初予定していた実験データの作成を完了させることができなかった。実験データがなければAIによるアーチファクト判定ツールを構築できないため、令和3年度の研究計画を前倒しすることもできなかった。 しかしながら、新たな数理モデルの構築を試みることで、AIに判定させるべきアーチファクトをpull-upのみに絞り込むことに成功した。これにより、AIの処理が単純化できると期待されるため、令和3年度以降のAIによるアーチファクト判定ツールの構築がよりスムーズに進むと考えられる。以上より、現在までの進捗状況としては、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず令和3年度については、令和2年度に決定した実験条件に従い実験データを取得する。実験データについては、アーチファクトの1つであるpull-upの判定に有用となり得るシグナルの強さや検出された位置などの指標(特徴量)を抽出した上で、判定ツール構築用のデータ(訓練データ)と検証データに二分する。続いて、訓練データを使ってコンピュータにトレーニング(機械学習)させた後、検証データを使ってpull-upを正しく鑑別できるかどうかを検討する。 pull-upを高精度で鑑別できるようになれば、pull-up以外のアーチファクトの判定についても挑戦したいと考えている。pull-up以外のアーチファクトについては、現状では人間が構築した数理モデルにより処理しなければならないが、AIの方が高精度で判定できる可能性も十分に考えられる。AIでより多くのアーチファクトを判定できれば、犯罪捜査で問題となる複数人のDNAが混合した試料を解析するためのソフトウェアにおいて、「何人のDNAが含まれているか」、「事件の被害者や被疑者のDNAが含まれているか」をより高精度かつ効率的に判定できるようになると期待される。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、アーチファクトをAIに判断させるツールの構築に必要な実験データを取得する予定であった。しかし、所属機関の変更のため実験試料、電気泳動装置を変更する必要が生じ、これに伴い実験計画を練り直すことになった。このため、実験データの取得に使用するチューブ、チップ類等の一部の消耗品を令和2年度に購入する必要がなくなったため、助成金の一部が次年度使用額となった。 令和3年度は、令和2年度に取得できなかった実験データを取得する予定である。当該助成金は、その際に使用する見込みである。
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Research Products
(2 results)