2022 Fiscal Year Annual Research Report
Searching for novel biomarkers to diagnose drug-induced respiratory depression
Project/Area Number |
20K18982
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
堤 博志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (50849114)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 過量服薬中毒 / GABAA作動薬 / バイオマーカー / 解糖系代謝物 |
Outline of Annual Research Achievements |
法医学の剖検例において、過量服薬による中毒の有無や程度の推定は、事件や事故の解明に非常に重要である。しかしながら、その推定方法は現在、死者から検出された薬物濃度に基づいて行われており、複雑な薬理作用を持つ多剤服薬事例では、中毒の推定が困難となっている。このような状況の中で、催眠鎮静薬であるGABAA作動薬は、多くの事例で検出されており、薬物濃度以外の客観的な指標が存在すれば、中毒推定において非常に有用である。 研究の初年度では、解糖系の酵素であるGAPDHの発現量が、GABAA作動薬であるフェノバルビタールの投与により増加することが明らかになった。次年度の研究では、解糖系代謝物である2,3-Bisphosphoglycerate、Dihydroxyacetone-phosphate、Glycerol-3-phosphate、Sedoheptulose-7-phosphateが、GABAA作動薬であるジアゼパムの投与により減少する可能性が明らかになった。これらの代謝物は、中毒の程度を推定する新たな指標となる可能性がある。 最終年度の研究では、次年度に発見されたバイオマーカー候補物質について、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-M/SMS)を用いた濃度測定方法の確立を目指し、in vivoでの検証を予定していた。しかし、水溶性物質である代謝物群に関する濃度測定法の確立は困難であったことから、今後の研究は、より測定が容易なGABAA作動薬を対象として進めていく予定である。 この研究成果は、過量服薬による中毒の推定において新たな手がかりを提供し、法医学の発展に寄与することが期待される。解糖系とGABA作動薬との関連性を明らかにすることで、中毒推定の客観的指標を構築する新たな道が開かれるであろう。
|