2022 Fiscal Year Research-status Report
腐敗剖検試料におけるエタノール死後産生の評価に有用な揮発性成分の定量解析
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20K18983
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
池松 夏紀 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20848410)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腐敗性揮発成分 / エタノール死後産生 / ガスクロマトグラフ質量分析装置 / GC-MS/MS / 法医剖検例 |
Outline of Annual Research Achievements |
倫理審査委員会で承認された本研究の測定対象(2019年4月~2021年12月までに当講座にて解剖した事例)883例の大腿筋肉を対象とし、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS/MS)・ヘッドスペース法のScan・SIM分析による①エタノールおよびn-プロパノールの定量分析と②昨年度同定した20種類以上の腐敗性揮発成分の定性分析、ならびに③事例背景や解剖写真からアウトカム(飲酒の有無・腐敗の程度)のデータ収集を行った。 機器分析の結果を解析したところ、20種以上の成分のうち、アセトン、イソプロパノール、アセトアルデヒド、イソバレルアルデヒドの4種が高頻度で検出されていることが分かった。 また解剖写真から腐敗の程度を肉眼的に判断した「外表の肉眼的分類」と、日本法医学会鑑定例概要に基づく7段階の「死後経過時間(PMI)分類」の2種類を用いて各事例を群分けし、琉球大学医学部保健学科基礎看護学講座生物統計学分野・米本教授の助言を受けて、アウトカムである「腐敗の程度」と検出された4種の成分との関係を検討した。 その結果、2種それぞれの群分けで腐敗の度合いが強くなるにつれ4成分とも検出する事例が多くなる傾向が見られ、腐敗指標として有用と考えられた。PMI分類は法医学分野で広く使われているが、温暖な気候の沖縄県では短時間で腐敗が進むなどの地域差が出やすいため、肉眼的分類による評価が可能と分かったのも意義が大きい。 以上の結果を第72回日本法医学会学術九州地方集会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本来は今年度で終了予定であったが、腐敗指標に有用な4成分の同定までは終了したものの定量分析を完了できず、科研費補助事業の期間延長を行ったため、進捗状況は遅れていると判断した。先に行ったエタノールとn-プロパノールの定量分析にて、機器バリデーションから定量操作までの一連の流れを確立したので、残る4つの成分の定量分析は円滑に行えるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
4種の揮発性成分、アセトン、イソプロパノール、アセトアルデヒド、イソバレルアルデヒドの定量分析を行い、既に分析済のエタノールおよびn-プロパノールの定量値と合わせて、以下の内容を統計学的解析により評価する ①非飲酒事例で2種類の腐敗分類との関係を検討:腐敗の程度とエタノール・n-プロパノール検出を比較し、現状腐敗指標として使用されているn-プロパノールで評価している腐敗はどのレベルの腐敗か、n-プロパノールはどの程度エタノールの死後産生を捉えているかを評価する。またその他4種の揮発性成分がn-プロパノールより適した、あるいは補助するような指標となるかを検討する。 ②飲酒事例も含めて2種類の腐敗分類との関係を検討:飲酒事例と非飲酒事例で腐敗の分類に従ってどの程度エタノールが検出されるかを評価する。また、飲酒の有無でn-プロパノール、アセトン、イソプロパノール、アセトアルデヒド、イソバレルアルデヒドの定量値に差があるかを評価する。 データ解析終了後、英語論文を作成し、2023年内を目標に適切な雑誌に投稿する。
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Research Products
(1 results)