2020 Fiscal Year Research-status Report
心不全終末期患者へのエンドオブライフケア:苦痛緩和への実践内容・評価の明確化
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20K19055
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Research Institution | Chiba Prefectural University of Health Sciences |
Principal Investigator |
坂本 明子 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 助教 (50634515)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心不全看護 / 終末期ケア / 苦痛緩和 / 評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、本研究の先行研究である「心不全終末期患者へのエンドオブライフケア:ケア移行の判断基準およびケア内容の究明」の論文化と並行し、本研究の文献検討を主として行い、来年度に実施予定のインタビュー内容の洗練化を図った。 先行研究の結果から、看護師は【デバイスや薬物治療が最大限に行われている上で苦痛があり、患者がすでに寝たきりや高齢で、治療を乗り越えられた先の生活が見えない時これ以上の苦痛を与えたくない】という苦痛緩和への思いがあり、終末期への移行判断を示す1つとなっていることが明らかとなっている。また、苦痛緩和への実践として、取りきれない苦痛へ緩和方法の模索を行い、【心まで痩せてしまった状況や身の置き所のない苦痛、あせりに対してタイミングを選んで訪室し、よく話し緩和を図る】ことも明らかとなっている。 文献検討では、MEDLINE・CINAHAL・医学中央雑誌およびハンドサーチによって「心不全」「エンド・オブ・ライフ」「終末期」「苦痛緩和」をキーワードに、心不全患者への苦痛緩和に関するケアの実践状況について調査した。調査した結果、心不全緩和ケアに対する認知度は直近5年で急速に広まっていた。患者は、呼吸困難・倦怠感・抑うつ・疼痛の症状を高頻度に発現しており、それはがん患者と同程度とみられる。呼吸困難に関する文献は、モルヒネ等の薬剤の使用量の検討やタイミングに関する知見が医師や薬剤師の視点から検証されている。呼吸困難感の次に出現頻度の高い全身倦怠感に関しては、倦怠感に関するあいまいな定義について、システマティックレビューがなされている。しかし、症状緩和のための基本的な看護ケアは、事例実践報告にとどまり、苦痛緩和のニーズの捉え方から実践、実施後の効果の評価をしている研究は見当たらなかった。 来年度はこれらを踏まえて、心不全終末期患者への苦痛緩和の実践についてインタビューを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は文献検討を中心に行い、倫理審査やデータ収集フィールドの調整を行う予定であったため、現時点での進捗状況を評価するならば、計画通りといえる。 またインタビューを行うにあたり、文献検討より看護師自身が苦痛緩和ケアの実践とその評価に関して不確実性をもっており、手探りでの実践・評価をくりかえしていることがうかがい知れたので、今後はこれをもとに計画的にインタビューを実施していく。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は当初の計画通り心不全患者へのエンド・オブ・ライフ・ケアー苦痛緩和への実践内容・評価の明確化についてインタビューを行い、看護師が捉える患者のニーズと実施した苦痛緩和ケアの内容、その評価を抽出していく予定である。
インタビューにあたっては、感染拡大防止策として、対象者の希望がなければ原則的にWEB会議システムを用いて実施する予定である。しかし新型コロナウィルス感染症の感染者数の状況によっては、対象者の負担を考慮する必要があるため、調査依頼予定の施設への交渉では、配慮しながらすすめていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、今年度は参加予定であった学術集会や緩和ケア研究会が、新型コロナウィルス拡大防止のために、オンライン開催となったため、旅費の支出が抑えられたことがあげられる。来年度は、調査協力依頼のために施設に赴く際の旅費のほか、インタビュー後のテープ起こし代、謝金代が執行される予定であるため、今年度の残金とあわせて執行できる計画である。
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