2020 Fiscal Year Research-status Report
The assessment of cognition in employment support for people with schizophrenia in Japan
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20K19087
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲垣 晃子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任助教 (40800652)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 精神科リハビリテーション / 統合失調症 / 認知機能評価 / 就労支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、統合失調症認知機能簡易評価尺度(The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia; BACS)日本語版(BACS-J)短縮版に関する妥当性の検証を行うこと、および就労支援施設等における統合失調症を持つ人への認知機能リハビリテーションにおける認知機能評価の実態やニーズを調査し、その普及に向けた課題について検討することである。 そのために本研究では、研究代表者が前年度までに取り組んできたBACS-J短縮版の妥当性について専門家や当事者へのヒアリングおよびBACS-Jを用いた面接調査によって評価し、国内外の先行研究との比較検討を行うとともに、就労支援施設等の支援者を対象に、BACS-Jをはじめとする認知機能評価尺度の使用の実態・ニーズに関する調査を計画している。 研究実施計画に則り、一年目である本年度は、まず文献検討を行い、BACS-J短縮版に関する先行研究について研究協力者である専門家との意見交換や考察を行うことで、本研究の位置づけや臨床的意義について整理した。その背景を踏まえ、統合失調症を持つ当事者を対象にBACS-Jを用いた面接調査および短縮版に関するインタビューを行い、BACS-Jの各課題の所要時間や、当事者の疲労感および達成感について調査した。その結果について国内外の先行研究との比較検討や、前年度までに実施した統合失調症患者のBACS-Jデータ解析によるBACS-J短縮版の検討に関して共同発表者らと議論を深め、学会での演題発表を行った。また、統合失調症患者のBACS-Jデータ解析結果および当事者への調査内容に関する専門家へのフォーカス・グループ・インタビューの成果報告については、結果をとりまとめて共同発表者らからのフィードバックを得た上で、2021年4月の学会発表に採択されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画において、本年度は、①BACS-J短縮版の妥当性の検討、②BACS-Jをはじめとする認知機能評価尺度の使用の実態・ニーズや課題に関する調査のため、統合失調症を持つ人の就労支援を行っている支援者を対象とした認知機能評価の実態やニーズに関する調査の依頼を予定していた。 ①BACS-J短縮版の妥当性の検討について、当事者を対象にBACS-Jを用いた面接調査を行い、BACS-Jの各課題の所要時間を調査し、当事者の疲労感および達成感やBACS-J短縮版に関するインタビューを行った。その結果をとりまとめて学会等で報告し、フィードバックを得ることができた。さらに、②BACS-Jをはじめとする認知機能評価尺度の使用の実態・ニーズや課題に関する研究計画について、倫理委員会の審査・承認を得て、準備を進めていた。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により認知機能リハビリテーションに関する研修会等が中止やオンライン開催に変更になるなど、当初想定していたリクルートの方法の変更を余儀なくされ、研究に遅延が生じた。一方で、BACS-J検査の経験豊富な専門家らと研究会で議論を行う中で、臨床・研究でのBACS-J短縮版使用の意義や、当事者へのインタビュー結果の考察に関して示唆を得るとともに、被験者である当事者の視点に加えて、検査者側の視点として、②短縮版使用が想定される就労支援施設の支援者への聞き取りの重要性が再確認された。 これまで①BACS-J短縮版の妥当性の検討に関して、学会発表および学内外の研究会において研究の進捗報告や意見交換を行うなど、おおむね順調に進展しており、今後は調査依頼先である就労支援施設等の状況を考慮して方法や時期について検討しつつ、引き続き研究実施計画に基づいて遂行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目である次年度は、認知機能リハビリテーションを実施している又は実施を予定している就労支援施設等の支援者を対象として、統合失調症を持つ人への認知機能評価の実施の有無、実施の方法、BACS-J短縮版へのニーズや、認知機能評価を実施していない場合はその理由、および導入における課題に関する聞き取りを実施する。認知機能リハビリテーションの研究会などに参加する就労支援施設等を中心に調査の依頼を行う計画だが、次年度も引き続き新型コロナウイルス感染症の影響を受けることが予想される。研究の推進にあたり感染予防対策を考慮するだけでなく、新型コロナウイルス感染症に係る対応によって就労支援施設等の業務自体に影響が生じていることも考えられるため、調査協力者の負担が少ない方法や時期についても充分に検討した上で、調査の依頼に向けた打ち合わせを行う。倫理委員会で既に承認されている調査方法について変更申請を行い、ウェブサイトやメーリングリストを通じたリクルートや、ウェブアンケート調査、リモートでのインタビュー調査などの方法を並行して準備するなどの対応策を講じることを計画している。 また、本年度までに行ったBACS-Jデータ解析および当事者への面接調査などの結果から得られた知見をもとに、専門家との意見交換によってさらに考察を深め、BACS-J短縮版に関する論文を執筆し、学会誌に投稿して公表することを予定している。
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Causes of Carryover |
本年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、当初計画していた就労支援施設等の支援者への調査の依頼や打ち合わせの実施を延期せざるを得ない状況となり、打ち合わせのための旅費や調査にかかる諸経費分が次年度使用額として生じることとなった。 これについては翌年度分として請求した助成金と合わせて、次年度に対面での打ち合わせ等が実施可能な場合の旅費や、対面での調査の依頼が行えない場合にはウェブサイトやメーリングリストを通じたリクルートや、ウェブアンケート調査およびリモートでのインタビュー調査などの方法を用いることを予定しており、その準備にかかる経費として使用し、そのほか当初計上した研究経費の事項に則して計画的に使用する。
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