2020 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症における病識の背景要因の解明および要因に基づく新しい治療戦略の構築
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20K19119
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Research Institution | Morinomiya University of Medical Sciences |
Principal Investigator |
小川 泰弘 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 講師 (80868737)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 病識 / 統合失調症 / 防衛規制 / 神経認知機能 / 抑うつ |
Outline of Annual Research Achievements |
病識の低下は精神疾患の主要な特徴のひとつであり、それは治療関係構築の困難さや治療アドヒアランスの不良さだけでなく、社会機能の低さや再入院率と関連していることが示唆されている。一方で、病識の高さが逆説的に抑うつや絶望、自殺リスクと関連しているという報告が近年蓄積され始めている。つまり病識の向上が統合失調症患者にとってプラスであるかどうかということは明らかではないという現象がある。そのため病識低下の背景要因を同定し、どの要因がどのようにこのパラドクスに関連しているかを明らかにする必要がある。病識とは、単に脳の機能で説明できるような自己の疾患に対する洞察という側面だけではなく、受け入れる側の心理防衛的な側面を含んだより複雑な構造が想定される。 本研究では①統合失調症の病識低下の背景要因が異なるいくつかのサブグループの存在を確認し、②背景要因の違いが抑うつや心理的苦痛など個人の精神健康に与える影響を明らかにすることを目的に、地域に住む統合失調症患者を対象として、年齢、性別、教育歴、発症年齢、などの基本属性、認知機能、病識、心理防衛的傾向、抑うつ、心理的苦痛などの横断的調査を開始した。今後必要な対象者数が集まり次第、病識を従属変数、背景要因(認知機能、心理防衛的傾向、認知機能と心理防衛的傾向の交互作用項)を独立変数とした重回帰分析を実施する予定である。 現在3つの病院に研究協力の許可を頂いている状況であり、今後も協力機関と被験者数を増やしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、研究協力機関である病院への出入りを制限されている状況である。 そのような状況の中で実施可能な形に研究計画を変更する必要があったため、その手続きに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度以降は、初年度に修正した計画を遂行し、データを蓄積し、仮説解明を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、学会等の参加が不可能であったため旅費の費用がかからなかった。 また、同影響により被験者のリクルートが予定通り進んでいないため謝金の費用が少なくなった。 次年度は、その予算を被験者謝金として使用し、より被験者のリクルートが進むよう準備を進めたい。
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