2021 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症における病識の背景要因の解明および要因に基づく新しい治療戦略の構築
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20K19119
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Research Institution | Morinomiya University of Medical Sciences |
Principal Investigator |
小川 泰弘 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 講師 (80868737)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 病識 / 統合失調症 / 防衛機制 / 神経認知機能 / 抑うつ / セルフスティグマ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は1施設でデータ収集の許可が得られ,精神科デイケアに通所している統合失調症患者24名分の収集が完了した.病識の測定にはThe Insight Scale日本語版(IS)を用いた.心理防衛的傾向の測定にはThe Defense Style Questionnaire日本語版(DSQ)を用いた.その他,以下の尺度を用いて各変数を測定した:ISMI(セルフティグマ),BACS-J(神経認知機能),BDI-Ⅱ(抑うつ),CORE-OM(心理的苦痛). ISとDSQ-42「未熟な防衛」との間に有意な正の相関が見られた(r=.589; p<.01).またISとBDI-Ⅱ,CORE-OM,ISMI(ステレオタイプの是認,社会的引きこもり)との間に有意な正の相関が見られた(それぞれr=.569, p<.01; r=.415, p<.05; r=.446, p<.05; r=591, p<.01).一方でISとBACS-Jとの間に有意な相関はみられなかった.現状では,未熟な防衛傾向を持つものほど,病識が高いことを示す,一見矛盾した結果が得られている.未熟な防衛をもつものは,自分は精神疾患であるというラベルを容易に受け入れてしまう可能性が示唆された.そのラベルを容易に受け入れるということは,精神疾患に抗いながら,その疾患を自分の一部だと少しずつ受け入れていく過程の中で生まれる葛藤を経験しなくても良いという意味で,一時的には自分を楽にするのかもしれない.現状として,サンプルサイズは十分ではなく,今後も継続したデータ収集が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度も新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,研究協力機関である病院でのデータ収集が行えていない状況であったが,なんとか1施設でデータ収集を行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は予定数までデータ収集を行い,解析を行う.他2施設で研究協力の許可をいただいている状況である.
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Causes of Carryover |
令和3年度内に,学会等で研究成果の中間発表を行う予定としていたが,コロナ禍の影響によりデータ収集が思うように進まず,発表に至らなかったため旅費の計上がなかった。次年度は,旅費の予算を被験者への謝金に充てることで,データ収集につなげる予定である。
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