2021 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症の感情表現障害が対人交流に与える影響の調査および治療技法開発の研究
Project/Area Number |
20K19122
|
Research Institution | Naragakuen University |
Principal Investigator |
福原 啓太 奈良学園大学, 保健医療学部, 専任講師 (60831005)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 統合失調症 / 陰性症状 / 情動表出の減少 / 感情表現 / 音声 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症の感情の障害について、近年、「他者の感情の理解」と「自己の感情の表出」が注目されている。前者は社会的認知機能の障害として扱われ、後者は陰性症状のうち情動表出の減少として扱われている。統合失調症患者の情動表出の減少は主に、表情による感情の表出と音声による感情の表出が注目されており、本研究では、音声による感情表出に焦点をあて、研究を進めている。感情表出の能力は社会生活、特に円滑な対人交流を営むうえで重要な要因であると考えられていることから、その評価方法や治療技術の開発は精神科医療において期待されている。 当該年度においては、統合失調症患者の音声サンプルの一部の音声解析を行った。解析対象は統合失調症患者23名、健常対照者24名の音声サンプルである。音声サンプルの内容は、あらかじめ用意した4種の文章をそれぞれ4つの感情(怒り・幸せ・悲しみ・無感情)で読むように指示された被験者の音読音声である。 音声解析は、リニアPCMレコーダーにて44,100Hzのサンプリング周波数で1秒当たり16bitでモノラル録音されたWAVファイルに対して、音声分析ソフトウェア(KAY PENTAX Multi-Speech Model3700)を用いて、1/100秒毎に実施した。抽出された各フレームの基本振動数(Hz)と音圧(dB)を用いてInflection(発生から得られたセミトーン値の標準偏差)、Intensity(発生から得られた音圧の平均)、Emphasis(発生から得られた音圧の標準偏差)の3要素を算出した。 当該年度において、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、当初の予定より進行状況が遅れており、上記の音声解析に留まった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに、統合失調症患者23名と健常対照者24名の音声分析が終了し、本研究で検証する統合失調症患者の感情表出を度合いを示す変数、つまり、Inflection(発生から得られたセミトーン値の標準偏差)、Intensity(発生から得られた音圧の平均)、Emphasis(発生から得られた音圧の標準偏差)の3要素の抽出が済んでいる。音声ファイルは統合失調症患者の3施行分、健常対照者の1施行分により、合計で、3,648個の変数が得られた。これらをもとに、統合失調症患者の各施行時期や健常対照者と統合失調症患者との群間比較など、統計学的に分析を進めていく準備が整いつつある。 当該年度においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、当初予定していた統計解析や論文執筆に至ることが叶わなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、前年度に実施した音声解析により抽出された変数つまり、Inflection、Intensity、Emphasisの値を用いて音声による感情表出の総合的な指標としてProsody値(Inflection、Intensity、Emphasisの各Z-Scoreの合計)を算出する。 そして、上記により得られた各変数を用いて、統合失調症患者の施行時期における比較や、統合失調症患者と健常対照者との群間比較について統計ソフトSPSSを用いて統計学的分析を進めていく予定である。さらに、音声解析により得られた統合失調症患者の各種変数と既に評価し得ている統合失調症患者の社会機能の指標(精神科リハビリテーション行動評価尺度;REHAB)との相関関係について統計解析を実施する予定である。 また、また、その分析結果をもとに、論文を執筆し、各学会において研究の成果を発表する予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大により、学会にて発表・参加する機会を得ることが困難となり、参加費や旅費などを使用する機会がなかった。また、同理由により、研究遂行に必要な協力者を呼ぶことができず、人件費や謝金を使用する機会がなかったため、次年度使用額が生じた。 さらに、研究遂行の遅れに起因する論文投稿料などの出版物に対する費用としても使用することができなかった。 次年度においては、研究遂行上必要な研究協力者を募り、人件費として使用し、さらに研究を進め、論文執筆、論文投稿料や学会参加による参加費・旅費として助成金を使用する計画をしている。
|