2021 Fiscal Year Research-status Report
Development and evaluation of gonadal dysfunction self-acceptance program for female AYA hematopoietic tumor survivors
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20K19167
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
太田 良子 金沢大学, 保健学系, 助教 (60832186)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | AYA世代 / がん / 妊孕性 / 女性 / トランスセオディカルモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は先行研究より、プログラムの基盤となる理論モデルに行動経済学で用いられるプロスペクト理論を用いることができないか検討した。行動経済学によると、人間は正しい情報提供があれば、合理的な選択ができるわけではなく、合理的な意思決定から系統的に逸脱するバイアスがあるとしている。家族形成期である15歳~39歳のAYA世代には、がん治療後に将来不妊になる可能性を心配しながら、妊孕性に向き合うことを先送りにする行動が指摘されている。リスクへの態度に関する人々の意思決定の特徴を示したプロスペクト理論によると、妊孕能が明らかになることへの恐れによる回避については、参照点が、「不妊かもしれない」とする損失回避の行動と考えられる。一方、将来より良い選択肢が現れると待機する行動について、参照点が「妊孕性は健康である」とした上で、妊孕性に向き合うことは、日常生活上コストを払う行動にあたり、現状維持バイアスが働いているといえる。そこでそれぞれ損失フレームのメッセージ、利得フレームのメッセージをプログラムの内容に組み込むことを試みた。しかし、がん看護の専門家、小児看護の専門家のスーパーバイズを受け、妊孕性に対して懸念を抱いている対象者に対して、透明性と回避可能性を十分に確保できないことから、採用に至らなかった。一方で、妊孕性に向き合うことを先送りにする挙児希望の女性の中には、不確かな状態が続く不安を感じながらも、妊孕性が明らかになることを恐れ、生殖専門医の受診を回避する行動をとり、自分の認知と行動に不協和を生じる人がA世代、YA世代の年齢層を問わず指摘されている。多様なライフステージと背景にあることを十分に考慮することが課題である。そこで次年度は、造血器腫瘍だけではなく、他のがん種において、も認知不協和を生じる女性がんサバイバーに対して、不協和を解消するプログラムを開発することとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまでの文献検討から、プログラムの介入目的と対象を絞り込むことができた。しかし、同時に多様性も浮き彫りとなり、検討していた行動経済学の理論では、リバタリアンパターナリズムに基づき、画一的なメッセージを打ち出すこため、透明性、回避可能性の確保が課題となった。プログラム内容まで検討した段階で、理論採用を断念したため、当初予定していた計画から遅れている。 多職種が関わるプログラム内容を検討している段階であり、主要評価項目、副次評価項目も概念枠組みの設定に合わせて尺度選定も必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
がんの治療後も子供が欲しいと考えるサバイバーの割合は7,8割に及び、がん治療前に子供を希望していなかった女性が、ライフステージに伴い希望するケースも報告されている。残存卵子の数は年齢と共に低下するため、がんサバイバーの女性は、健康な女性よりも妊孕性に向き合い、治療後の早い段階で、妊孕性のモニタリングや早期の不妊治療などフォローアップのために生殖医療の専門家に相談することが望ましい。しかし、実態は国内外問わず、がん治療後に生殖専門医に相談する割合は極めて低い。妊孕性の低下は月経周期の異常が現れるより早期に生じるため、がん治療の妊孕性への長期的な影響を身体症状として知覚しにくく、認知的不協和を解消するために、妊孕性は重要ではないという感情統制を行う傾向がある。この感情統制による不協和の解消から、生殖専門医受診へと行動変容を行うことが、AYA世代のがんサバイバーにとって将来の子どもをもつ選択肢の担保へとつながると考える。そこで、健康行動の変容をモデル化したJames O. prochaskaが提唱したトランスセオレティカルモデル(以下TTM)を理論基盤とするプログラム開発する。 行動変容を目的とすること、かつ安全性に十分配慮するためには、単一の職種が関わるプログラムではなく、産婦人科医、心理士も開発に携わり、AYAがんサバイバー当事者に対しても協力を仰ぐことが望ましい。そのため、TTMに基づき、多職種で実施するプログラムの開発を目指すこととする。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの感染拡大の影響で、研究相談の県外移動に制限がかかった。Webミーティングで代替することにより、当初予算を計上していた交通費が大幅に削減された。 また、本年度にデータの検討を行うために計上していた、費用についても所属教育機関の助成制度によって人員を確保することができ、その分、次年度に繰り越すこととなった。
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