2020 Fiscal Year Research-status Report
奈良県内の地域住民とその環境におけるピロリ菌の蔓延実態ならびに感染源の包括的解明
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20K19250
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
堀内 沙央里 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40794334)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Helicobacter pylori / 感染源 / PCR |
Outline of Annual Research Achievements |
ピロリ菌の慢性的な感染は胃がんの発症リスクを増大させることが知られている。ピロリ菌は経口感染するが、感染源については不明な点が多い。この感染源をつきとめることができれば感染予防策の検討が可能となり、ピロリ菌の感染制御、ひいては胃がん発生の制御につながると考えられる。本研究では、胃がんの発生が多い地域の住民、患者、ならびに生活環境からピロリ菌の検出を試み、その蔓延実態と遺伝学的特徴を明らかにし、包括的な視点から感染源の解明を行うことを目的としている。 今年度は県内の対象市町村と医療機関に研究協力依頼を実施し、研究計画の打ち合わせを行うとともに、本研究の実施にあたり倫理審査委員会の承認を得た。 また、ピロリ菌の感染源の検討として、環境水3検体およびイヌの糞便6検体からなる生活環境検体9検体からピロリ菌の検出を試みた。具体的には、各検体から直接、あるいはキットを使用して細菌DNAを抽出し、PCR法によりピロリ菌のハウスキーピング遺伝子であるglmM遺伝子および病原遺伝子であるcagA遺伝子の増幅を行った。今回、環境検体からはピロリ菌が保有する遺伝子は検出されなかった。一方で、増幅された16S ribosomal RNA遺伝子のシークエンス解析により、イヌの糞便検体6検体中2検体からピロリ菌と同属であるヘリコバクター属遺伝子(Helicobacter canis)が検出された。 今後は対象市町村および医療機関の協力を得て、ヒト検体および生活環境検体からピロリ菌の検出と遺伝学的解析を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を遂行していくための基盤の整備は概ね整ったと考えられる。 今年度は環境検体からはH. pyloriは検出されなかったが、今後は更に検体数を増加させることにより、本研究目的に関する検討が進む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、対象市町村および医療機関において研究を遂行していく予定であるが、本研究ではヒトを対象とするためCOVID-19の感染状況を見ながら研究を進める必要がある。
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Causes of Carryover |
次年度は対象市町村および医療機関において検体を採取し、解析を進めていく。また、本研究から得られた成果は学術集会等において積極的に公表する予定である。そのため、次年度はこれら検体採取と解析、および旅費にかかる支出が考えられる。
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