2023 Fiscal Year Annual Research Report
奈良県内の地域住民とその環境におけるピロリ菌の蔓延実態ならびに感染源の包括的解明
Project/Area Number |
20K19250
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
堀内 沙央里 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (40794334)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | Helicobacter pylori / Helicobacter 属 / 感染源 / 生活環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
ピロリ菌は経口感染し、慢性的な感染により胃がんを発症するため、感染源に応じた感染予防が必要不可欠である。本年度は環境水2検体(池・小川)およびイヌの糞便2検体からピロリ菌の培養と遺伝学的解析を行った。 生活環境40検体(井戸水・川・湖・池等から採取した水29検体と公園等で採取したイヌの糞便11検体)からピロリ菌の検出を試みた。水検体はろ過処理後フィルターをBrucella Brothにて洗浄し、Brucella Brothをヘリコバクター培地にて培養した。また、Brucella Brothから細菌DNAを抽出後、PCR法によりピロリ菌が持つ遺伝子(glmM, cagA遺伝子)の増幅を行った。イヌの糞便検体からはキットを使用してDNAを抽出後、PCR法にてglmM遺伝子とcagA遺伝子を増幅した。 生活環境40検体からはピロリ菌が保有するglmM遺伝子とcagA遺伝子は検出されなかった。イヌの糞便検体から抽出した細菌DNAに対するHelicobacter 16S ribosomal RNA遺伝子のシークエンス解析の結果、11検体中3検体からピロリ菌と同属であるヘリコバクター属遺伝子(Helicobacter canis)が検出された。また、湖・沢・川から採取した水3検体から分離した細菌を解析した結果、Pseudomonas属;Pseudomonas putida, P. aeruginosa等 やAeromonas hydrophila, Rahnella aquatilis等が検出された。 今回解析した生活環境検体からはピロリ菌は検出されず、感染源を明らかにすることはできなかったが、イヌの糞便検体からヘリコバクター属遺伝子が検出された。イヌと飼い主間でのピロリ菌伝播の可能性を示唆した報告もあるため、イヌとヒトに着目して更に調査・解析する必要性が考えられた。
|