2021 Fiscal Year Research-status Report
災害用段ボールベッドがもつ体圧分散能と睡眠改善効果に関する実験的検証
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20K19264
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Research Institution | Kansai University of Social Welfare |
Principal Investigator |
濱西 誠司 関西福祉大学, 看護学部, 准教授 (80633007)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 段ボールベッド / 避難所 / 体圧分布 / 筋骨格系への負荷 / 睡眠の質 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は避難所の生活環境改善のために近年導入されるようになった段ボールベッドの体圧分散能に着目し、避難所への段ボールベッドの導入によって避難者の腰背部痛の予防等にどの程度寄与できるか明らかにすることを目的として研究を進めてきた。これまで、段ボールベッドの持つ利点として、床面からの高さを確保することで避難所で問題視されてきた床からの冷気や粉塵の吸引を軽減することが報告されている。また、高さの確保によって起立や着座動作も楽になることから、高齢者の寝たきり予防にも寄与できることも利点として挙げられている。しかし、避難所運営ガイドラインでは避難所において毛布以外の寝具は自治体が備蓄すべき物資に指定されておらず、布団等の寝具については発災後3日経過した時点で設置すべきか自治体ごとに検討するよう定められている。そのため、従来より懸念されている南海トラフ地震のような巨大地震発生時には自治体の協定に基づき段ボールベッドが提供されたとしても、布団等の提供が間に合わないことが考えられる。そこで令和3年度までは、ダミーモデルを用いて段ボールベッド自体の持つ体圧分散能の評価を試みてきた。その結果、段ボールベッド単独使用時の平均体圧と体圧分布については床にブルーシートを敷いた場合と比べて差がないことが明らかとなり、段ボールベッドに毛布を敷いた場合でも十分な体圧分布の改善が認められない可能性が示唆された。以上の結果より、布団やマットレス等が準備できない状況下において段ボールベッドのみを提供しても、被災者の筋骨格系への負担感については十分な改善効果が期待できない可能性が示された。 以上の結果を踏まえ、令和4年度は段ボールベッドに臥床した際の体圧分布を海外の避難所で一般的な簡易ベッドに臥床した場合と比較することに加え、両者を用いて就寝した際の睡眠の質についても検討を行うことを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
段ボールベッドの持つ体圧分散能に関する工学的な検討結果に関して執筆した論文は既に採択されており、令和3年度には実際に人を対象とした検討に移行する予定であった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、対象者を募集することが困難であったために予定していた実験を行うことができなかった。しかし、すでに測定・解析にかかる詳細なプロトコルは構築できており、今後の研究を実施していくための研究計画についても本学のIRBから承認を得ている。令和4年度は簡易的な脳波計測装置を利用することで感染リスクを軽減するように努め、研究計画を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は人を対象とした睡眠評価を実施していく予定である。具体的には、海外の避難所で一般的に利用されている簡易ベッドと段ボールベッドに臥床にした際の体圧分布を比較するとともに、両者を用いて就寝した際の睡眠の質についても確認していく予定である。なお、感染リスクを低減できるよう簡便に装着可能な測定デバイスに変更するなど実験方法を工夫することで、コロナ禍でも当初計画していた研究を確実に進めていくことを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて予定していた実験および成果発表が困難となり、計画していた予算と執行額の間に差額が生じた。今年度はデータ取得法を一部簡便な方法に変更することで感染リスクを低減しながら実験を実行できる見込みであり、予定されていた研究計画を進めることが可能になると考える。
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Research Products
(1 results)