2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K19269
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Research Institution | Higashiosaka Junior College |
Principal Investigator |
野口 代 東大阪大学短期大学部, その他部局等, 助教 (80744854)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 認知症 / タイムシフト / 災害 / 危機認識 / 研修 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症の人が古い過去の記憶の中で生きているような認識を持っており、現実とは違う世界にいるような状態は「タイムシフト(Time-shifting)」現象と呼ばれている。災害時の調査からは、このタイムシフトを起こしている認知症の人は、現実の危機認識が低下しており、緊急時に自分からは避難行動を起こさない可能性が示唆されており、その対応は重要な課題である。本研究では、どのような人がタイムシフトを起こしやすいのかをより詳細かつ正確に把握し、またその対応法を確立することを目的とした。 その中で今年度は、主にタイムシフトに関する情報収集を行い、またタイムシフトしている人への支援方法の確立という観点から、現在の本邦においてその潜在的な価値が期待されている一方で、課題がとりあげられることもある外国人介護士(外国人介護人材)による認知症ケアに関しても文献的な研究を行った。具体的には、関連するキーワードによりデータベース検索を行い、抽出された文献についてさらに精査を行い、対象となった文献について目的にそって分析を行った。その結果、まず全般的に外国人介護士の存在価値が高く評価されていることがわかった。その上で認知症に対する考え方が現在の科学的知見と異なっていたり、直感的・経験的にケアを行う傾向が示された。ニーズとして、認知症の人を介護することが介護負担につながっていたが、介護技術の習得について長期的には高い評価を得ていることがわかった。今後の外国人介護士による認知症ケアについては、単純な言語教育や、日本人向けの教育・研修内容をただ分かりやすくするだけでなく、各国の認知症やタイムシフトに対する考え方やケア方法の特徴を把握・理解した上で、それに応じた外国人介護士向けの教育・研修プログラムを作成し、継続的に支援する必要性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、新型コロナウィルス感染症の流行により、施設で面会制限などがあり、施設を訪問することによるインタビュー調査や質問紙調査が予定通りにはいかず、現状で可能な情報収集と文献的な研究を中心に行った。また施設関係者との日程が合わないことなどがあり、打ち合わせの回数も少なくなった。参加を予定していた学会の年次大会についても中止や、オンライン開催などが主であったため、それによる情報収集や情報交換が不十分と考えており、進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、これまで行ってきたタイムシフトに関する情報収集を継続して行い、また横断的な調査研究にとりかかる。横断研究では、介護施設において、認知症のある利用者とその介護職員を対象者とする。手続きとしては、認知症の人の背景情報とタイムシフトに関する情報を、本人への面接および介護職員への質問紙と聞き取りによる調査から得る。また職員に対する質問紙調査と聞き取りでは、タイムシフトした利用者への具体的な対応方法とその有効性についても調査する。令和3年度からは、オンラインも活用し、施設関係者との面談や、学会の年次大会への参加を行い、情報収集・情報交換を行っていく。これらの研究に基づき、さらにタイムシフトに関する前向き研究や対応方法の確立、介入効果の検証につなげていくことを計画している。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、新型コロナウィルス感染症の流行により、施設で面会制限があり、施設を訪問することによる調査が予定通りにはいかなかった。また施設関係者との日程が合わないことなどがあり、打ち合わせの回数が少なくなった。参加を予定していた学会の年次大会についても中止や、オンライン開催などが主であった。そのため、旅費および謝金等が計画よりも少なくなり、383,727円が令和3年度に繰り越されることになった。 繰り越されることとなった383,727円については、令和2年度において予定よりも少なくなった施設への訪問を、令和3年度にまわすため、旅費および謝金等として令和3年度に使用する予定である。また施設関係者との打ち合わせや、学会の年次大会への参加を、今後オンラインでも行う予定である。そのための環境整備に繰り越した資金の一部を充てる予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Book] 心理学と心理的支援2021
Author(s)
一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟
Total Pages
12(248)
Publisher
中央法規出版
ISBN
978-4-8058-8232-0