2020 Fiscal Year Research-status Report
地域で生活する統合失調症者のSOC向上プログラム開発のための基礎的研究
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20K19274
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
蔵本 綾 香川大学, 医学部, 助教 (20849640)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Sense of Coherence / 統合失調症 / 地域生活 / 人生経験 |
Outline of Annual Research Achievements |
地域で生活する統合失調症者のSense of Coherence(SOC)に関して、当事者へのインタビュー調査を行い検討した。その際には、統合失調症者は他者とのコミュニケーションを苦手とする方も少なくないため、研究協力施設に継続的に訪問し、活動を共に行うことで、利用者と顔なじみの関係を形成できるように努めた。研究対象者6名に30分から1時間程度のインタビュー調査を実施し、SOCの3つの構成要素である「把握可能感」「処理可能感」「有意味感」の視点から分析し、以下のような結果が得られた。 「把握可能感」に関連する内容として、同居している両親との今後の生活への不安、自分の将来の見通しの低さ、内服薬の自己管理、自分の調子の波の自覚、事業所での同病者との出会い、などが挙げられた。 「処理可能感」に関連する内容として、事業所での活動を通した生活リズムの維持、事業所での活動を踏まえた自分なりの生活スタイルの構築、過去のつまづき体験の振り返り、などが挙げられた。 「有意味感」に関連する内容として、事業所との長期的な関わりによる満足感、統合失調症を発症してからの自己評価、「普通の生活」への憧れと諦め、などが挙げられた。 上記より、当事者にとっては、事業所での活動が生活の基軸となっていること、また、自分なりに疾患との付き合い方を見出してはいるが、それでも、疾患が無ければ、という気持ちを持ち続けていることが伺われた。 また、精神障害者のSOCに関して文献検討を行った。研究対象者の疾患は統合失調症、気分障害、摂食障害など多岐にわたり、使用尺度では13項目版(7件法)が最も多いという結果であった。当事者のSOC得点は一般成人よりも低い結果が示されていた。日本における地域の当事者を対象とした研究では「復職・職場復帰」に向けた取り組みの評価指標の一つとして用いられていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
地域で生活する、病識を有する20歳以上の統合失調症者15名程度にインタビューを行う予定としており、現在、研究対象者6名のインタビューまで終えたが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、施設への立ち入り制限が設けられ、研究が実施できない状況となったため。再開の見込みが立たない状態であり、今後の研究遂行にさらなる影響を及ぼす可能性が考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、研究協力施設に立ち入り制限が設けられ、研究実施が困難となっている。研究協力施設として承諾を得られている施設は、地域活動支援センター、就労継続支援B型事業所、精神科病院併設のデイケアである。 研究協力施設の追加も検討したが、精神障害者の支援施設は感染対策のゾーニングが難しい場合が多く、感染が起こった場合にクラスター発生のリスクが高いため、依頼しても承諾が得られる見込みが低いことが推測される。また、研究対象者は「地域で生活する統合失調症者」であり、IT機器の活用が難しい場合が多く、遠隔会議システムを用いたインタビューの実施は困難である。 そのため、新型コロナウイルス感染症の流行状況を鑑みつつ、研究協力施設に研究再開の打診を行う予定である。研究対象候補者として10名程度リストアップしていただいていたが、依頼当初とは状況が変わっているため、再度確認を行う。インタビュのー実施時には、プライバシーの保たれる環境は確保しつつ、感染対策には十分配慮した上で実施する。
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Causes of Carryover |
研究対象者6名へのインタビューを実施した後から、新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴い、研究遂行が困難な状況となり、インタビュー反訳料等の支出がなくなった。また、関連学会への参加も検討していたが、中止もしくはWeb開催に変更となり、移動費・宿泊費として計上していた予算が不要になったため、次年度使用額が生じた。 新型コロナウイルス感染症の状況次第ではあるが、研究再開が可能となれば、移動費、インタビュー反訳料等で使用予定である。
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