2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K19291
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Research Institution | Seisen Jogakuin College |
Principal Investigator |
黒田 梨絵 清泉女学院大学, 看護学部, 准教授 (50784584)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地域内完結型の初動体制 / 避難行動 / 避難所開設 / 山間地域 / 感染症対策 / 地区防災計画 / 減災 / 自然災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、山梨県東部の山間地域の住民の自然災害発生時における①避難行動、および、②避難所開設の2点に関する初動体制を明らかにすることを目的とし、また得られた結果を、山間地域という地域特性に合致する災害初動体制の構築に資するため質問紙調査を実施した。 調査は、山梨県東部の山間地域に位置するA市の住民2,403名を対象に実施した。調査は郵送法にて実施し、887部の調査協力を得た。 その結果、住民は、避難指示等発令時に避難行動をとった経験のある人は約20%、避難生活を経験したことのある人は約2%であり、本研究対象者は、避難指示等が発令された時に避難行動や避難生活をしたことがない人が多い傾向にあることがわかった。また、住民は、①避難行動では避難行動要支援者対応や危険個所の確認方法等が不明確であること、②避難所開設ではトイレの衛生保持や感染症対策等が計画されていないこと等を課題として挙げた。そして、居住地区にて地区防災計画の立案有1割であり、①避難行動計画の立案有5割、②避難所開設計画の立案有1割、防災倉庫備蓄品の把握有2割との実態も明らかになった。 現時点では初動体制の整備に重要となる地区防災計画立案等に至っていない現状がわかった。本地域の特性に合う地域内完結型の初動となるよう、今後、①避難行動計画、②避難所開設計画の作成の検討、および、必要な資機材・物資の検討と確保が可能となるよう計画作成に向けて検討していく必要性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、山梨県東部の住民を対象に無記名自記式質問紙調査を実施し、住民の自然災害発生時の①避難行動、および、②避難所開設の2点に関する初動体制の実態、および、初動体制の課題を明確にすることを目的として取り組んできた。コロナ禍における調査実施であったが、研究計画どおり、住民対象に調査を行い、完了した。 調査対象者数においては、研究計画時は対象者数10,000名程度を目標としていたが、新型コロナウィルスに対する感染症対策、および、高齢者の多い地域(高齢化率25.5%)であることを考慮した上で、リモートでの各地域住民への調査協力依頼となり、対象者を拡大することが困難であった。しかし、調査協力に同意を得られた住民2,403名に調査票を配布し、887名より回答を得ることができた。新型コロナウィルス感染症蔓延の影響にて、研究計画通りには実施困難であったが、対象とする全地域の住民より回答を得られ、かつ、分析可能な対象者数を確保することができた。また、データの解析も順調で、自然災害発生時の①避難行動、および、②避難所開設の2点に関する初動体制の実態については量的分析を、初動体制の課題については質的分析にて解析し、結果を得ることができた。 調査結果をまとめた報告書冊子を作成し、市役所や各自治体等にフィードバックして調査結果をお知らせした。現在、成果をまとめ、論文投稿の準備を行っている状況である。 以上のことから、本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通りに遂行する予定である。 具体的には、令和3年度は、山梨県東部において自然災害が発生した際に対応の中心となる施設(自治体、消防組織、警察、病院)の管理者を対象に、地域住民の①避難行動、および、②避難所開設といった初動における支援体制等の実態と課題を明確にするため、質問紙調査を実施する。また、令和2年度で同定された初動体制に関する課題として挙がった①避難行動における「避難行動要支援者対応や危険個所の確認方法等」、②避難所開設における「トイレの衛生保持や感染症対策」の内容を重点調査項目として調査を実施する予定とする。 また、明らかになった結果をまとめ、研究成果を学会発表、論文作成をおこなう。 現在、研究を遂行する上での課題として、新型コロナウィルス感染症の蔓延が挙げられる。新型コロナウィルスが依然として蔓延する中での複数施設の管理者を対象とする調査実施となるため、調査依頼をリモートで行う等の感染症対策を充分に講じた上で、研究を遂行することとする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症が蔓延する状況下にて、研究対象地域へ移動しての研究に関する説明と調査依頼をするのではなく、リモートを活用して研究に関する説明と調査依頼を行った。また、成果発表を行う際も、コロナ禍の影響にて、学会がオンライン開催となり、学会会場へ移動することがなかった。以上2点の理由により、旅費を支出することなく、研究を実施することができたため、次年度使用額が生じた。 また、調査データの入力に関し、コロナ禍の影響により、調査対象者数を縮小せざるを得なかったことから自力でデータ入力が可能となった。そのため、人件費・謝金を支出することなく、研究を実施することができたため、次年度使用額が生じた。 本研究は、最終年度にて山梨県東部の中からモデル地区を選出し、避難所宿泊訓練を行う予定である。新型コロナウィルス感染症が蔓延する中での実施となるため、実現可能性を考慮するため、翌年度において、研究計画の時点では予定していなかった予備実験を実施する計画を追加する。予備実験に必要な検査機器等の購入、および、調査実施の際に必要となる調査票印刷代や郵便費等の経費として使用する予定である。
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