2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K19291
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Research Institution | Seisen Jogakuin College |
Principal Investigator |
黒田 梨絵 清泉女学院大学, 看護学部, 准教授 (50784584)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地区防災計画 / 避難行動 / 避難所開設・運営 / 感染予防・蔓延防止対策 / 常備蓄 / 自然災害 / 減災 / 山間地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度において、A市の住民を対象に実施した居住地区における初動体制に関する調査にて「地区防災計画の立案に至っていない」ことが明らかになった。この結果から、令和3年度は、居住地区の地区防災計画を立案することによって発災時における初動体制を明確にすべく、A市の91地区の地域特性に合う地区防災計画を住民主体にて作成を開始し、完成を目指すことを目的とした。 特に調査にて重点課題として同定された地区防災計画の項目として、①「避難行動」では近隣住民で実施する安否確認の方法や避難行動要支援者対応、危険箇所の確認方法等、②「避難所開設・運営」では名簿作成やトイレの衛生保持、感染症対策等、③防災倉庫に常備蓄する資機材・物資の備蓄品目等が挙がり、これらの内容を包含した地区防災計画の作成に向けた検討をA市の各地区にて開始した。開始に際し、各地区の自治会長、自主防災会長、防災士、避難所運営リーダーをはじめ、住民を対象に、地区防災計画の作成に向けた講習会を複数回開催した。各地区の防災計画にて、①②では行動可能な視点での立案、③では具体的な項目と品目と数、管理方法等を一覧表にて作成できるように支援した。 また、住民より地区防災計画立案に向けたニーズとして感染症対策やトイレの衛生管理等が挙がり、住民のニーズに応えるための研修会や相談会を複数回実施した。講習会や相談会等は新型コロナウィルス感染症対策のため、オンラインにて実施した。 その結果、91地区中4地区において地区防災計画が策定され、うち1地区において避難所内の感染症予防および蔓延防止対策(動線分離や空間分離等)の立案に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究計画の予定通り、山梨県東部の市役所、病院、消防等における住民の初動対応への支援体制の実態と課題の明確化を目指し、各施設と打ち合わせを開始した。しかし、各施設における住民の初動対応への支援体制に関する計画自体がないという実態が明らかになった。そのため、各施設、および、地域住民と本年度に取り組む内容を検討した結果、本年度に予定していた市役所、病院、消防を対象とした実態調査の実施を中止し、令和2年度の調査結果で喫緊の課題として挙がった「地区防災計画の立案」を住民主体で取り組み次年度の研究につなげること、および、住民が地区防災計画を作成する際に市役所、消防が住民を支援することに変更し、一部の地域で地区防災計画の策定をするまでに至った。 地区防災計画を住民が主体的に立案できるように、住民に計画立案に向けたニーズを聞き取り、希望した地区を対象に、計画立案に向けた講習会の開催、感染予防・感染症蔓延防止対策に向けた研修会の開催、手洗い講習会の実施、居住地域の危険箇所を把握するための地区踏査等を実施した。現時点にて計画立案に至らなかった地区に対しては、各地区のニーズに合わせて講習会や研修会、相談会を実施し、地区防災計画を立案できるよう支援する予定がある。 さらに、次年度に予定している研究計画を実施するため、立案された地区防災計画を基に、1泊2日の宿泊訓練実施に向け、実施する地区・時期・場所が決定し、訓練実施に向けた打ち合わせを開始するまでに至っている状況である。 現在、成果をまとめ、成果発表や論文投稿の準備を行っている状況である。 以上のことから、本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通りに遂行する予定である。具体的には、令和4年度は、地区防災計画を策定した地区を対象とし、その計画を基に、1泊2日の宿泊訓練を実施する。特に、令和2年度で重点課題として同定された①「避難行動」では避難行動要支援者対応や危険箇所の確認、②「避難所開設・運営」ではトイレの衛生保持や感染症対策等、③防災倉庫に常備蓄する資機材・物資の備蓄品目に関する計画の有用性を検証する。トイレの衛生状況や避難所環境の経時的汚染状況については、検査機器等を使用して客観的指標を用いて確認する。訓練終了後、訓練実施によって見える地区防災計画の修正・改善点を明らかにするため、質問紙調査を実施する予定とする。 また、明らかになった結果をまとめ、研究成果を学会発表、論文作成をおこなう。 現在、研究を遂行する上での課題として、新型コロナウィルス感染症の蔓延が挙げられる。新型コロナウィルス感染症が収束しない中での宿泊訓練の実施となるため、訓練実施時期は対象地域の新型コロナウィルス蔓延状況を確認し、感染状況が落ち着いていることを確認した上での実施とする。また、研究依頼等はオンラインにて行い、訓練の際は、訓練場所に合わせた人数の制限、訓練前中後の健康状態の確認、訓練施設内での換気や消毒の徹底等の感染予防策を充分に講じた上で、研究を遂行することとする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症蔓延により、他県への移動が制限されたため、オンラインにて研究説明や打ち合わせ、講習会や研修会等の開催、学会参加となったため、旅費が全くかからなかった。また、計画通りに本年度の調査を開始するために研究対象施設と打ち合わせた結果、調査を実施せずとも結果が明らかであることがわかった。そのため、調査を中止し、対象地域からの要望として挙がった地区防災計画の立案に向けた住民教育の実施に計画を変更したため、予定していた調査にかかる物品費等がかからなかった。以上の理由により、次年度使用額が生じた。 次年度の使用計画は、予定通り、訓練や検体採集に必要となる資機材や物品等の購入、訓練場所の視察や訓練準備・実施のための交通費や郵送費、調査費用や調査で得たデータ入力、成果発表のための旅費等に充当する予定とする。 また、現時点にて新型コロナウィルス感染症が未だ収束の見えない中、本年度に立案した地区防災計画に沿った訓練を実施し、検体採集等による研究を行う次年度は、申請時には予測できなかった感染予防・防止対策のために必要な資機材の購入に充当することとする。次年度の研究を遂行するために必須となる感染症予防・防止対策を充分に実施し、安全を確保したうえで研究を遂行するための費用としたいと考える。
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Research Products
(3 results)