2020 Fiscal Year Research-status Report
時間的・空間的音響解析法を用いた日本語話者に適した発話評価課題の開発
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20K19324
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
田村 俊暁 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 助教 (20780373)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | dysarthria / 音響分析 / フォルマント遷移 / 発話明瞭度 / 連母音 / 二重母音 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,舌の運動性を反映する音響指標である第2フォルマントの遷移(遷移時間,周波数遷移域,遷移率F2 slope)が,発話条件毎にどの程度影響するのかを調べるために以下の実験を行った. 若年の健常者5名の協力者に対して,「あい」「えお」さらに「おい」を埋め込んだ文章を音読させた.これらの母音は発音するときに,舌の比較的大きな運動が必要であることから選択した.作成した文章は「手負いの虎の絵をひょいと描いたよ」である.協力者には,「はっきり」,「普通より2倍遅く」,「普通」,「できるだけ速く」という4条件で発話させた.各条件について10回の繰返し発話をさせた.1名の協力者から得られたデータの総計は200個である.これらの4条件で得られた第2フォルマント遷移の遷移時間,周波数遷移域とそこから算出された遷移率の比較を行った. 結果は,「はっきり」条件では「普通」条件とフォルマント遷移の諸側面で大きな違いはなかった.「遅く」「速く」条件では,「普通」条件に比べて遷移時間が長くなったり,遷移域が広くなったりしたが,遷移率では大きな違いがないことがわかった. これらの結果は,第2フォルマント遷移を発音能力の指標として用いる場合は,遷移率が数値として安定しており,遷移時間や周波数域は発話の条件で変わる可能性がることを考慮することで,より有益な指標となる.つまり,フォルマント遷移の課題設定の際は,母音から母音への移行を標的にする場合は,発話条件を複数設定する必要性があるかもしれない. さらに精度を上げるために,協力者を追加で募ったり,高齢者や実際の患者を対象にした追加の研究を継続していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画は,初年度で健常者を対象に発話条件によるフォルマント遷移の違いを調べることであった.しかし,対象として想定していた学部生の大学への入校が制限され,予定の人数が年度内に収集できなかった.人数は幾分少ないが,統計処理をして,いくつかの知見を得たため,次年度にも継続してデータを収集,論文発表ができるように研究を進めている. さらに,計画では患者による解析は後半に設定していたが,これまで蓄積していた患者データを後ろ向きに解析することに変更した.その成果を論文として投稿し,採択された.論文は2021年度内に「音声言語医学」に掲載予定.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に収集した健常者5名のデータについて解析を進めて,実験の手順の妥当性が確認できた時点で,追加で5名のデータを収集する.もし,想定していなかった結果に与える可能性のある因子を発見した場合は,計画を修正して適性と思われる手順で,改めて健常者のデータを収集して解析を行う. 当初計画通りに,2021年度は,他の音響指標との関連などを調べて,第2フォルマント遷移を測定するのに適した文章課題を作成するために,健常者を対象にした基礎的な研究に重点を置いて追加の研究を行っていく.
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Causes of Carryover |
当初対象として想定していた被験者データの収集が遅れた.また,参加予定であった国内・国際学会が延期になるなど旅費を使用しなかった.データ収集および旅費は次年度以降後ろ倒しで使用していく.
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Research Products
(1 results)