2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of the biomechanical simulation system for the analysis of the mechanism of injury for tenosynovitis
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20K19362
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
横田 紘季 名城大学, 理工学部, 助教 (50815876)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腱鞘炎 / 力学特性 / 解剖体 / センシング / 有限要素シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,数理モデルを用いた力学シミュレーションと,解剖体の剖出およびセンシング技術を用いた医工学領域からのアプローチによって,前腕部腱鞘炎の力学的発症メカニズムを解明するための「生体内力学シミュレーションシステム」の開発を目的とする.令和3年度は,構築した3次元有限要素モデルに対し,シミュレーションパラメータの検討および手関節運動時に加わる軟部組織への力学的負荷について解析を行った.発症頻度が高いドケルバン病やインターセクションシンドロームに大きく関与する長母指外転筋・短母指伸筋について,令和2年度に行った腱部の力学評価に加え,筋線維部の引張特性を明らかにした.解剖体から筋線維束を採取し,単軸引張試験を行うことにより,筋線維部の材料パラメータを算出した.さらに,採取した筋から生理学的筋横断面積を計測し,筋が発揮し得る最大収縮力の推定を行った.得られたパラメータを有限要素モデルに適用し,関節運動および筋収縮を表現可能な力学シミュレーションシステムの構築を行った.手関節部に角変位を与え,同時に長母指外転筋・短母指伸筋に収縮力を発揮させることで,手関節の掌屈・背屈・撓屈・尺屈に加え,前腕部の回内・回外の6肢位を組み合わせた運動を再現し,腱部に加わる最大応力を定量化した.解析により,掌屈時よりも背屈時において最大応力が増加することが確認された.また,回内・回外については中間位において低負荷状態となり,回内・回外方向に運動を行うことで,それぞれに応力が増加することが確認された.また,全組み合わせにおいて腱部への負荷が最大となった肢位は,回外・背屈・尺屈位となり,背屈・尺屈を含む動作時において,腱と腱鞘の接触部分における応力が高くなる傾向が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度では,解剖体の筋組織を剖出し,単軸引張試験機を用いた力学計測により材料パラメータを決定した.得られた結果をシミュレーションモデルに適用することで,より詳細な生体組織のモデル化が進んだ.また,受動的な手関節部の運動に加え,能動的な筋収縮力を発揮できる力学シミュレーションシステムを構築した.これにより,日常的な手関節運動を再現した際の,長母指外転筋腱・短母指伸筋腱および隣接する軟部組織の力学的負荷を定量化することが可能となった.構築したシステムを用いた手関節各肢位における腱部周囲の応力解析・接触解析を進めた結果,回外・背屈・尺屈肢位において,腱の遠位部および腱鞘内側部の応力が高くなることが示され,腱鞘炎発症の原因となり得る肢位であることが示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は,構築したシミュレーションシステムの詳細化を行う予定である.有限要素モデルを用いた能動的な筋収縮について,現在のシステムでは筋収縮に伴う筋腹の膨張が表現不可能なため,組織間の接触による力学的インタラクションが考慮できていない.今後,有限要素モデルの筋線維部を構成している線形材料に対して熱膨張条件を適用することにより,筋の長軸方向に収縮力を発揮させると同時に,熱による垂直方向への筋腹膨張を考慮できるシステム構築を目指す.また,提案シミュレーションシステムの有効性を検証するために,解剖体を用いた前腕内部の力学的負荷の定量化を推進する予定である.
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Research Products
(1 results)