2020 Fiscal Year Research-status Report
めまい・平衡障害に対する定量的歩行検査の臨床応用に向けて
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20K19373
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
小泉 洸 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (30715636)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歩行検査 / 平衡機能 / 前庭リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
前庭障害によるめまいやふらつきに対する治療として前庭リハビリテーションの有効性が報告されているが、現在臨床的に用いられている平衡機能検査では自覚症状と平衡機能の改善に乖離が見られることがしばしばある。この理由として臨床現場で実用されている主な平衡機能検査が静止時のバランスを評価していることが挙げられる。歩行検査は動的な平衡機能検査であるが、前庭障害患者に対して歩行計を用いた定量的歩行検査は未だ臨床応用が進んでいない。 携帯型歩行計を用いた定量的歩行検査を臨床応用できれば前庭障害患者の病態評価及び治療の効果判定について有用な検査となることが期待される。そのため、前庭障害と歩行異常の関係についてデータの蓄積が必要である。 現在、前庭障害をきたしている患者に対してリハビリ施行時に携帯型歩行計による歩行の解析およびvideo head impulse test (vHIT)による半規管機能測定を施行し、データを集めている最中である。 平衡障害をきたしている患者に対してvHITを施行して前庭動眼反射を測定したところ、眼球運動の幅(ゲイン)が低下、または遅れて反応が見られるcatch up saccadeが検出され一つまたは複数の半規管機能の低下が見られた。また半規管機能低下をきたしている患者では前庭誘発筋電位(VEMP)で測定した平衡班の機能も低下している傾向にあり、歩行も不安定となっている場合があった。患者の中には治療に伴い歩行が改善し、定量的歩行検査で歩行のパラメーターに変化が見られた症例があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究にとって重要な検査であるvideo head impulse test (vHIT)を施行する装置を購入した際に、機器の見積もり額が交付された研究費に近い金額であったことと、想定されていた購入費用よりも大きい金額となったことから、研究費用の前倒し支払い請求および他の資金源を確保することとなった。そのため購入までの手続き期間が予想よりも長期化し研究のスタートが遅れた。 研究のためには前庭障害をきたした患者の協力が必要であるが、新型コロナウイルスの流行により受診患者数が減少し、かつ病院業務も縮小体制となったため当初予想していたよりもデータの集まりが遅い状態である。 vHITは人間の左右内耳にそれぞれ3つずつ存在する半規管の機能を個別に測定することができる画期的な装置であるが、正確なデータを得るには検査手技に習熟する必要がある。当初想定されたよりも検査手技の習得に手間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
検査手技には充分習熟し検査施行は問題なく可能な状態である。外来患者減少は未だ続いておりデータ蓄積に時間がかかることが予想されるため、これまで通り患者に対して検査を進めていく一方で、正常被験者を対象に検査および平衡機能訓練を施行しデータを集めていく方針である。フィギュアスケートの回転ジャンプに代表されるように、健常者でも訓練をすることで平衡機能が向上することはよく知られている。その変化をデータとして捉えることができれば、当初の目的である定量的歩行機能検査の有用性および前庭リハビリテーションの有用性についての知見を深めることは可能であると考えられる。
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