2021 Fiscal Year Research-status Report
精神疾患患者に対する運動療法の効果と地域移行へ向けた有効性の検討
Project/Area Number |
20K19379
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
荒川 英樹 宮崎大学, 医学部, 教授 (60746436)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 精神科医療 / リハビリテーション / ロコモティブシンドローム / 地域移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
精神科医療では、近年、入院医療から在宅医療への「地域移行」を進める体制が強化されており診療報酬改定などにも反映されている。治療抵抗性の精神症状により長期間の入院治療を余儀なくされる患者も多数であるが、長期入院に伴う身体機能や日常生活活動の低下が地域移行を阻害している場合も多く、理学療法、特に運動療法を併用することによる地域移行への有用性を検証することを目的としている。 本年度は精神科専門病院3施設において、活動量、身体機能、精神症状、認知機能、生活動作能力などの測定、評価を実施するとともに、これまでの研究により得られた過去のデータを含めて解析を行い、長期精神科病院入院患者のロコモティブシンドローム(LS)のリスク、ステージ評価と関連因子の検討を行った。 精神科療養病棟に入院し、LSステージテストを受けた患者84名を対象とした。対象者の年齢、入院期間、抗精神病薬使用状況、日常生活動作などを評価し、LSステージテストと各評価項目との相関を分析した。対象者の平均年齢は60.0±13.6歳で、60歳以上がほぼ6割を占めた。参加者の平均入院期間は10.5±12.0年で、半数以上の患者が5年以上入院していた(17.9%は5年から10年、36.9%は10年以上)。90%近くが1年以上入院していた。LSステージテストでは、60.7%がステージ3、21.4%がステージ2、14.3%がステージ1、3.6%がリスクなしと評価され、一般的な地域生活者と比較して運動機能、移動能力が大きく低下していた。LSステージの結果は年齢、入院期間、日常生活自立度と有意な相関を示した。 精神科病院での長期間の入院を余儀なくされる患者では、老化や長期入院に関連して運動機能や日常生活動作に影響を及ぼす可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、研究の進捗は遅れている。本研究は、関東や関西など全国各地の精神科専門病院との多施設共同研究として進めており、研究協力病院を研究代表者が訪問し必要な会議を実施しながら行う予定としていたが、新型コロナウイルス感染症により国内移動に大きく制限を受けたことなど、研究計画の進捗に大きく影響を及ぼした。また、新型コロナウイルス感染症により病院診療、治療そのものが人員や感染対策などの面から縮小していることもあり、特に身体的な接触を伴うリハビリテーション医療に関してはその影響を大きく受けている。
|
Strategy for Future Research Activity |
依然として新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けている状況下ではあるが、研究協力病院における測定、評価は進行できている。また、これまで研究代表者が研究協力病院と協力して行ってきた精神疾患患者に関連した研究データの総括も合わせて進めており、この環境下でも実施可能なリハビリテーション、運動療法に関しても検討を行っている。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症に対して所属機関の規定により、研究協力病院への移動が制限されたため旅費などの支出が減少した。また同様に、参加を予定していた学会の開催地への出張も制限により行うことができなかったため、旅費などの支出が減少した。
|
Research Products
(4 results)