2020 Fiscal Year Research-status Report
超音波画像を用いた股関節不安定性の定量評価および寛骨臼関節唇損傷との関連性の検討
Project/Area Number |
20K19380
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
河合 誠 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (20737366)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 股関節微小不安定性 / 寛骨臼形成不全 / 寛骨臼関節唇損傷 / 超音波動態検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性股関節症の一要因と危惧されている股関節不安定性の実態は不明瞭な点が多い。本研究では、レントゲン画像などで描出できない股関節の微小な不安定性を評価するmicroinstability test時の生体内での大腿骨頭の動態を明らかにし、偏位量を定量化し、検査の妥当性や病態との関連性を調査する。 臨床での重要性を明らかにするために、初年度は股関節微小不安定性を呈すると言われている疾患に対する理学療法成績に関連する論文作成に努め、現在国際誌へ投稿作業中である。本論文では、関節唇損傷患者を対象に理学療法を中心とした保存治療を行い、治療成績を関節唇損傷の重症度別に分析した結果、重症度の高い群で臨床スコアの有意な改善が得られなかった。これらの群ではmicroinstability test陽性の患者も多く、股関節の微小不安定性が治療成績に影響を与える可能性を示している。 また、股関節微小不安定性を有する可能性のある症例に対して行った過去の超音波動態検査を分析し、症例報告として整形外科領域の学会へ演題登録中である。本演題では、股関節不安定性を呈すると報告されている関節包損傷患者の術前後において、microinstability test時の超音波動態評価を行った。その結果、関節包縫合術前後での骨頭の偏移量は低減し、自覚的な亜脱感も消失した。これは、関節包損傷によって惹起される関節不安定性評価への有用性を示している。 一方、本研究費にて、偏移量の定量化を検討するための検査および超音波動態解析に必要な機器を整備し、実験事前準備は完了している。今後の感染状況に応じた施設使用状況によって速やかに予備実験を開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナの感染拡大によって、大学の閉鎖、病院の外来休止などが不定期で行われ、実験の実施が長期にわたり困難となった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルス感染対策に伴い、予備実験は休止している。そのため、実験可能になり次第、予備実験のデータ収集を再開する。データ収集を前期中に終了し、今年度中の公表を目指す。 また、同理由による診療制限のため、患者を対象とした研究は被験者数が不足することが予想される。よって、過去のデータも後ろ向きに収集、解析するよう研究デザインを変更する。対象は、当院にて理学療法(保存療法、術後を含む)を施行した、寛骨臼関節唇損傷を認めた患者 (FAIあるいは境界型寛骨臼形成不全患者)あるいは寛骨臼形成不全と診断された患者で、超音波診断装置を使用したmicroinstability testおよび機能評価を実施したものとする。Microinstabilityに関連するXp、CT、MRI画像所見、理学所見、手術所見などの構造的および機能的指標と、超音波検査で得られた偏位量との関連性を検討し、健患比較および患者群比較を実施する。得られた結果の今年度中の公表を目指す。 当初予定していた前向き研究は、対象を当院受診数の比較的多い寛骨臼形成不全患者も含めたデザインに変更して継続する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染対策のため学会参加が困難であった。また、購入を検討していた超音波診断装置について、解析可能な画質を担保できる予算内での機器がなかったため、次年度以降も検討したい。 超音波動態評価において、大腿骨頭の動きを定量化するためのソフトウェアの購入を検討中である。 また、得られた成果は速やかに論文化したいため、英文校正費や投稿費としての使用も予定している。
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