2020 Fiscal Year Research-status Report
侵害性の高い痛み刺激による脳内血流調節系の制御機構の解明
Project/Area Number |
20K19387
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
守屋 正道 帝京平成大学, 健康医療スポーツ学部, 助教 (80848135)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳血流 / 侵害刺激 / コリン作動性 / 交感神経 / マイネルト基底核 / 三叉神経脊髄路核 / 化学遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.侵害刺激による自律機能および脳血流変化の記録(第1研究) さまざまな体性感覚は,その入力に応じた適切な応答を誘発する.その応答を支える上で必要な全身性の血流供給は,主に交感神経系の活性化を介して確保される.角膜支配感覚神経の大部分はC線維侵害受容性線維であり,これらは三叉神経脊髄路核尾側亜核を介して視床体性感覚系ではなく腕傍核系に投射する.そのため,逃避回避行動のための全身性の血流供給の亢進とともに,脳幹内ネットワークを介して覚醒性の警告シグナルとして機能し脳血流にも影響を及ぼす可能性がある.この動作機構を解明するため,角膜に機械的および化学的刺激を与え,自律機能と脳血流の変化を記録した.urethane麻酔下人工呼吸下の雄性ラットをlaser speckle contrast imagingによって嗅球後部から後頭皮質までの脳血流を可視化した.角膜に対する機械刺激および化学刺激は,広範な皮質脳血流の増加と動脈圧上昇を引き起こした. 2.脊髄切断によって血圧の影響を除外した状態での実験・解析(第2研究) 刺激によって生じる全身血圧や心拍数の変化が脳血流変化に及ぼす影響を検証するため,上部胸髄(第2-3胸髄)を横切断した.動脈血圧および心拍数を連続計測し,血漿液補充(4 % Ficoll溶液,i.v.)さらに必要があれば,dopamine hydrochloride(用量範囲,i.v.)投与によって,上部胸髄切断による血圧下降を最小になるようにした.交感神経を介した血圧変化を抑制した前後で、上記各刺激の影響を比較した.侵害刺激による動脈圧上昇は上部胸髄切断によってほぼ消失したが,脳血流の増加反応は不変であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全身調節系とは独立の脳内血流制御系の意義は,侵害受容などの緊急性と重要性の高い体性感覚刺激に対して,速やか,かつ,直接的な脳血流応答を引き起こすことにある,との仮説を立てた.本研究計画の目的は,選択的侵害受容入力が,脳内血流制御系を特異的に活性化する可能性を実験的に検証することである.昨年度すでに第1研究(機械刺激・化学刺激による自律機能および脳血流への影響に関する記録)が終了したことにより,記録・解析のための基礎技術を確立したといってよい.この技術をさらに応用し,第2研究の一部(脊髄切断によって血圧の影響を除外した状態での実験・解析)を開始している.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度中には第2研究(薬理的手法を用いたコリン作動性の関与についての検証)を終了させる予定である.具体的には,前脳基底部マイネルト核神経活動の抑制が大脳皮質血流反応に及ぼす影響を調べる目的で,マイクロマニピュレーターを用いてマイクロシリンジを脳内に挿入しGABA受容体作動薬muscimolを注入する実験系である.さらに第3研究(化学遺伝学手法を用いた脳血流制御機構の同定)の準備を併行して進捗している.
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の影響で実験の開始が遅延した.そのため消耗品費の執行を控えている状況である.今年度は感染予防策を徹底した上で実験を行っていくので,前年度の残額は今年度の消耗品費に充てる予定である.
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