2021 Fiscal Year Annual Research Report
がん性骨格筋萎縮の機構解明に基づくビタミンD投与の有用性検討
Project/Area Number |
20K19405
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
宮川 良博 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, ジェロサイエンス研究センター, 研究員 (70867291)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨格筋 / がん悪液質 / ビタミンD / VDR / 筋萎縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん悪液質は進行期がん患者において頻繁に発症し、予後を悪化させる因子として重要であるが、現在までに具体的な治療法は開発されていない。がん悪液質の重要な病態に骨格筋萎縮が挙げられ、筋量と生命予後が相関することが知られている。骨格筋萎縮に対する介入として栄養介入が行われており、ビタミンDは加齢に伴う骨格筋萎縮に対する治療・予防剤として期待されている。これまでにがん悪液質モデルに対してもビタミンDの筋萎縮予防効果について検証されているがその有効性は低く、またがん悪液質ではビタミンDの血中濃度に関わらずビタミンD受容体(VDR)の発現が亢進することが報告されている。つまり、がん悪液質による骨格筋萎縮にビタミンD-VDRシグナルの変調が何らかの影響を及ぼしていると考えられる。本研究では、まずマウス骨格筋細胞株Ric10とマウス大腸がん細胞株C26を用いてin vitroがん悪液質モデルを作製したところ、このモデルにおいても筋管細胞の萎縮、Vdr発現の増加を認めた。次に骨格筋特異的Vdr欠損マウスを用いてがん悪液質モデルを作製し、がん悪液質によって誘発される筋萎縮とVDR発現の関連について検証した。その結果、がん悪液質において骨格筋のVdrをノックアウトすることで、筋重量の減少、筋線維横断面積の縮小が認められた。さらに、Vdrのノックアウトにより前脛骨筋において筋萎縮に関連する遺伝子の発現量が顕著に増加し、Murf1とFbx32のタンパク質発現量も増加傾向が認められた。これらの結果より、がん悪液質において骨格筋ではVdrの発現が亢進するが、これは筋萎縮に抵抗するための防御的な反応である可能性が示唆された。
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