2020 Fiscal Year Research-status Report
変形性膝関節症の重症度や症状に伴う運動学的変化:新手法による筋動態の評価
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20K19411
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山縣 桃子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(PD) (50848223)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 変形性膝関節症 / 歩行 |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性膝関節症(膝OA)は患者数の多い進行性の関節疾患であり、疾患の進行に関与する要因を特定することは重要である。そこで本研究の目的は、歩行中の関節運動や下肢の筋活動から、膝OAの進行に関与する筋・関節動態の特徴を縦断研究によって明らかにすることとした。 対象者は、Kellgren-Lawrence(KL)分類でグレードIからグレードIIIと診断された膝OA患者11名とした。どのような筋・関節動態の特徴が膝OAの進行に関与するかを調査するため、本研究では、7年前に三次元動作解析装置と床反力計によって計測した歩行中の運動学・運動力学データを利用した。筋・関節動態の特徴を定量化するため、AnyBody Modeling Systemで作成した筋骨格モデルを用いて、歩行中に重症側の内側・外側コンパートメントにかかる圧縮力(KCFmed、KCFlat)を推定した。立脚期における下肢の筋活動も併せて算出した。また、膝OAの進行の程度を調査するために、7年間のKL分類のグレードの変化や、レントゲン画像から算出した膝関節の関節裂隙幅の狭小化の程度を評価した。 結果、歩行中のKCFlatが小さい患者ほど、7年後に内側関節裂隙幅の狭小化が進み、KL分類のグレードが悪化する傾向にあった。一方で、歩行中のKCFmedや下肢の筋活動の影響は小さかった。 以上より、一般的に用いられる、KCFmedを減少させるような歩容だけでなく、KCFlatに荷重を乗せるような歩容も将来のOA進行を抑えるために有用である可能性が示唆された。今後は対象者数を増やし、膝OAの進行に関与する筋・関節動態を特定していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大により、変形性膝関節症患者のリクルートや計測に難渋し、当初の予定通りにデータ計測を行うことができなかった。現時点では対象者数は少ないが、より精度の高い筋骨格モデルの作成を試み、疾患の進行に関与しうる筋・関節動態に関して重要な示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は対象者数を増やし、どのような歩行特性が変形性膝関節症の重症化に関与するかを特定する予定である。 さらに、これらの歩行特性が変形性膝関節症の発症の予測因子となりうるかを調査する。具体的には、膝関節に疼痛を有さない健常高齢者を対象に、膝関節のMRI画像の撮像と歩行データの計測を実施する。MRI画像により健常高齢者の中から超早期の変形性膝関節症患者を抽出し、疾患の重症化に関与する歩行特性が、超早期の変形性膝関節症患者にも観察されるを明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、情報収集のために予定していた旅費が発生しなかったことや、当初の予定よりもデータ計測に遅れが生じたため人件費等の支出が当初の予定よりも減少した。2021年度には、データ計測やデータ解析に関わる人件費の発生や、研究の成果を発表するための学会参加費など、2020年度当初予定分の執行が2021年度に見込まれる。
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