2020 Fiscal Year Research-status Report
エビデンスに基づく人工股関節全置換術前後のシームレスな理学療法プログラムの構築
Project/Area Number |
20K19419
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
田中 繁治 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 助教 (50817666)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 変形性股関節症 / 人工股関節全置換術 / リハビリテーション / 理学療法 / QOL / 歩行 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では高齢化の影響により、変形性股関節症を発症する患者が増加し、人工股関節全置換術(THA)を受ける患者が10年前の1.7倍となっている。この患者数の増加は、社会保障費の増大を招くものであり、国家の財政を圧迫することが懸念されている。THA後の早期回復のためには理学療法を中心とした適切なリハビリテーションが重要であるが、科学的根拠の蓄積が不十分であり、効果的なリハビリテーションプログラムの立案にまでは至っていない。本研究ではTHA後の生活の質(QOL)と歩行能力の回復に焦点を当て、これらを効果的に回復させるためのリハビリテーション実施時の介入ポイントと目標値を設定し、手術前後からの科学的根拠に基づいたシームレスな理学療法を構築することを目的としている。 本研究は、1施設の情報だけではなく、普遍的な情報を得るために多施設共同研究を実施している。先行研究の詳細な調査を行い、THA前後に計測する因子を選定し、4つの社会人口学的因子、8つの理学療法評価、3つの手術情報を計測することを計画した。選定したこれらの因子については、協力施設の代表者らとも協議し、具体的な測定方法の決定に至った。また、予備実験として一部の協力施設で患者への計測を行い、規定時間内に計測が行えるかの検証も実施している。 今後は、複数の施設での計測を継続し、症例の蓄積を行っていく。目標症例数に達した後には術後のQOLと歩行能力をアウトカムにした決定木分析を行い、介入すべきポイントについて整理する。そして、得られた介入ポイントの目標値をカットオフ値を用いて算出し、検査特性値を算出することで目標値全体での予測精度までを明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に予定していた研究マニュアルの作成、倫理審査の承認は終了している。その後に、研究協力施設の募集と施設訪問による研究概要の説明を実施し、現在5施設での計測が開始となっている。しかしながら、COVID-19の影響により当初予定していた研究概要の説明のための訪問が実現できていない施設もあり、データ計測に至っていない施設もある。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度については研究協力施設の訪問と計測完了済みのデータの定期的なチェックを実施する。また、COVID-19の影響のため研究概要の説明のための訪問ができない施設に対しては、電子メールや電話などを活用して状況を確認し、研究全体の進行をマネジメントする。2021年度については、研究協力施設での計測が中心となるが、2022年度からは得られたデータの基礎統計量を算出するなどのデータの傾向を把握する。そして、QOLと歩行能力をアウトカムにした決定木分析をモデルし、独立変数として術前の社会人口学的因子や理学療法評価などを投入することで介入すべき身体機能障害を明らかにしていく。また、カットオフ値や検査特性値を明らかにすることにより、得られたモデルの臨床での有用性を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、研究協力施設への訪問説明や学会参加ができなかった。次年度については研究協力を表明している施設への訪問を実施する予定である。また、本研究で使用する筋力計を追加で購入する予定である。
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