2020 Fiscal Year Research-status Report
不整脈による意識消失メカニズムの解明-心臓が脳血管を制御する-
Project/Area Number |
20K19473
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
石井 圭 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (70803899)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 不整脈 / 心臓ペーシング / 脳血流 / 迷走神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
重篤な高頻拍の不整脈は意識消失や突然死へと繋がる危険な病態である。速すぎる心拍動により心臓から十分な血液を送り出せなくなることで血圧が低下し、結果として脳血流量が減少することで意識消失を引き起こすと考えられてきた。しかし、不整脈患者から得られたこれまでのデータをもとに「高頻拍の不整脈時には血圧とは関係なく、心臓からの求心性信号が積極的に脳血流を減少させる機構が存在する」という新たな仮説をたてた。 本年度は上記仮説を検証するための実験環境を整備し、麻酔下ラットを用いてメカニズムの有無を検証した。具体的には、心臓ペーシング時に脳血流を含む各種循環系指標を計測し、脳血流応答の脳領域差と、数例ではあるが、脳血流の領域差を生み出す要因を検証した。心臓ペーシングにより動脈血圧が大幅に減少した際、大脳皮質領域の血流量は比較的血圧依存性に低下したが、視床下部や中脳領域では血管拡張がより大きく生じることで血流減少量を低減させていた。一方で、両側迷走神経を切断したラットではそのような低減効果が消失した。以上の結果より、不整脈時には心臓から脳へ求心性信号が生命維持に重要な視床下部・中脳領域の血流量維持に貢献することが示唆された。また、心臓からの求心性信号が上記脳領域の血流を増加させているのであれば、他方で求心性信号により積極的に脳血流が減少している領域が存在するはずである。このような可能性を踏まえ更なる検証を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの影響で当初想定していた実験スケジュールが大幅に変更となったものの、実験環境を整備し、実験を開始することができた。例数や脳血流測定領域はまだ足りていないがおおよその結果は得られたため、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、当初の研究計画に加え、覚醒下でのデータ計測の可否や不整脈誘発手法の検証を目指す。また、これまで得られた結果をより強固なものとするために、n数を増やす等更なる実験を行い、論文投稿を目指す。
|
Causes of Carryover |
本年度実施計画の麻酔下健常ラット実験について進展があり、「不整脈時の心臓からの情報が脳血流調節に及ぼす影響は脳部位ごとに異なる」という成果を得た。この成果を踏まえて令和3年度以降に予定している心筋梗塞モデルラット実験の環境整備を早期に開始することで、より現実的な状況である覚醒下および不整脈を併発しうる心筋梗塞下でのメカニズム実証が早期に可能となる。以上の理由から、前倒し支払請求を行ったため次年度使用額が生じた。 追加配分後の助成金とあわせて、令和3年度以降も必要となる装置や消耗品を購入し、当初の研究計画を加速させる。
|