2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K19479
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
浅野 友之 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツメディカルセンター, 契約研究員 (00870411)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アスリート / コツ獲得 / 現実適応 / 個性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
アスリートにとっての「動きのコツ獲得」という事象は,パフォーマンス向上のみならず,その獲得過程における体験が彼らの心理的側面の発達において大きな影響を及ぼすはずであり,“スポーツと人格形成”というスポーツ心理学の古典的課題にも応えうる研究事象であると考えられる.本研究では,アスリートのコツ獲得に伴う心理的成長を「個性化の過程(“自分らしさ”を探求し表現していく過程)」と捉え,コツ獲得体験がアスリートの生涯に渡る心理的成長においてどのような役割(機能)を果たすのかを検討する.このことは,競技スポーツの意義や効果的なコーチングの有り様について検討するための有益な手がかりを提供するはずである. 本年度は,アスリートの生涯発達におけるコツ獲得体験の役割について仮説を生成することを目的とし,トップレベルのアスリート(オリンピアン,プロアスリート)の伝記資料を分析資料とした生育史分析(西平,1996)を実施した.現在までに明らかになったこととして,長く競技に取り組んできたアスリートがこれまでの自身の競技体験を振り返った際,節目となるタイミング(例えば,競技環境や競技水準の移行,その後の競技継続を左右する重要な局面など)で「動きのコツ獲得」と関連する印象的なエピソードやパフォーマンス向上について言及している傾向が示唆された.また,個人の生育史全体に焦点を当てると,①幼少期・学童期は「誰にも負けたくない」といった情動的な体験が得意技の獲得へとつながっていくこと,②青年期には幼少期・学童期の体験をベースとして得意技に磨きをかけていくこと,③競技期の終盤では「自身が競技に取り組む意義の再考」が更なる動きの洗練や深化の原動力になっていくこと、といった様相が推察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は当初計画していた,伝記分析の手法を用いた仮説生成に取り組んだ.概ね研究実績で示した内容が示唆されたが,「一個人の生涯発達におけるコツ獲得およびそのプロセス」については,個人差による部分が大きいため,更なる分析・検討が必要であると判断した. 具体的には,①「生涯発達におけるコツ獲得体験の心理的機能」について個人差(生育史、性格的特徴など)を踏まえて多角的に検討する,②明らかとなった知見の妥当性について議論し,精査する(質的研究の専門家と解釈の妥当性について合義する,各種学会での成果発表など)を継続して実施していく.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,上記したように伝記分析を継続して実施し,「アスリートの生涯発達におけるコツ獲得体験の心理的機能」に関する仮説を多角的に検討する.また,生成された仮説を検証および精緻化していくために,コツ獲得体験を有する一流のスポーツ指導者を対象とした面接調査を実施する. ただし,昨今の新型コロナウィルス感染症拡大に伴い,調査活動(原則的には対面での面接調査を実施する計画)が十分に実施できない場合も考えられる.その場合はオンラインでの面接調査で対応するなど臨機応変に研究を実施していく.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け,各種関連学会が中止およびオンライン開催となり,当初計上していた旅費等の支出がなかったため. 次年度もこれらの状況が継続すると考えられるが,研究資料の収集,研究備品の購入,調査にかかる人件費(調査協力謝金,分析協力謝金)に充て,本研究活動の充実に向けて効果的に使用していく.
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