2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K19479
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
浅野 友之 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (00870411)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アスリート / 動きのコツ / 現実適応 / 個性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究によって明らかとなった知見を関連学会にて発表した.ここでは,アスリートの競技ヒストリーにおける“動きのコツの連続性(競技ヒストリーにおける動きのコツの変遷)”を検討することを目的とし,長期に渡ってトップレベルで活躍したアスリート5名の伝記資料を分析した.分析の対象者および資料の選定基準は,①世界レベルの大会に複数回出場して上位成績を収めていること,②自身の得意技およびプレーの特徴に関する記述(フォーム,動き方,感覚などを含む)が豊富であること,③競技に対する自身の価値観や心の動きに関する情報が豊富であること,④幼少の頃の競技体験(あるいは身体運動の体験)について言及されていること,とした. 分析の結果,個人の競技ヒストリーにおいて,①幼少期・学童期は「誰にも負けたくない」「そのスポーツがおもしろい」「憧れ」などの情動的な体験に支えられながら競技に取り組み,朧げながらも既にこの時期には【原点となる“わざ・スタイル”の獲得(あるいはその直観)】が発生していたこと,②青年期には幼少期・学童期の体験をベースとしながら【高いパフォーマンスを実現するための“理(ことわり)”の探究】が生じていること,③競技期終盤では年齢による肉体的な衰えと向き合いながら「自身が競技に取り組む意義の再考」し,それがさらなる動きの洗練・深化の原動力になり,最終的には【原点となる“わざ・スタイル”の再発見】が生じていること,といった動きのコツの連続性が見出された. 以上のことから,動きのコツは個人のさまざまな内面の動きがパフォーマンスとして現れたものであると同時に,アスリートは競技人生を通して動きのコツ及び自己と向き合い続けていることが推察された.そして競技ヒストリー全体を貫くこの絶え間のない往還が,アスリートが現実適応と個性化を果たしていく上で重要な役割を担うことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では,「動きのコツ獲得」という言語化困難な事象に研究者自らが相互に関わっていく中で浮き彫りにしていくという立場を取っている.必然的に,対象となるアスリートとは強固で密接な関係性に支えられながら関わっていくことが求められるが,新型コロナウィルス感染症による影響が残存しており,計画していた調査活動を十分に行うことが困難であった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究を計画していた期間を1年延長し,これまでの研究活動によって得られた仮説検証のためのインタビュー調査および論文執筆を進めていく.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響が残存していたことにより,当初計画していた調査が十分に行えず予算を執行できなかったため.研究期間を延長した上で次年度は仮説検証の調査を拡充し,予算を研究旅費,人件費(調査協力謝金,分析協力謝金)等に充てて効果的に執行していく.
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