2020 Fiscal Year Research-status Report
運動が2型糖尿病による気分障害を改善する機序の解明ー脂肪組織の適応に着目してー
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20K19502
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
冨賀 裕貴 佐賀大学, 医学部, 日本学術振興会特別研究員 (50826394)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 運動 / 2型糖尿病 / 脂肪組織 / うつ・不安 |
Outline of Annual Research Achievements |
2型糖尿病は世界規模で拡大する健康問題の一つであり,末梢での糖代謝異常のみならず,中枢に影響し,心の健康を脅かすことが明らかになってきた.運動は,2型糖尿病やうつ・不安の予防・改善策として有効であることはよく知られている.一方で,運動の何がこのような恩恵効果をもたらしているか,そのメカニズムの多くは謎に包まれている.本研究では, 2型糖尿病や運動による脂肪組織の特徴的な変化が,心の健康を調節しているという仮説を立てた.本研究は,脂肪組織移植技術と行動科学的手法を用いて,2型糖尿病及び運動時のうつ・不安様行動調節における脂肪組織の役割を解明することとした. 本年度は,回転ホイール付きケージで11日間飼育したマウスから摘出した皮下白色脂肪を2型糖尿病モデルであるdb/dbマウスに移植し,強制水泳試験および高架式十字迷路試験によりうつ・不安様行動に及ぼす影響を評価した.野生型マウスに比べてdb/dbマウスでは顕著な高血糖,脂肪蓄積,肝臓重量の増加が認められた.運動脂肪の移植は,db/dbマウスの随時血糖値を減少させ,内臓脂肪の炎症マーカー遺伝子発現を減少させた.高架式十字迷路試験による不安様行動評価から,db/dbマウスにおいて顕著な探索行動・活動性の減少が認められた.しかしながら,運動脂肪の移植による不安様行動の顕著な改善効果は認められなかった.これらの結果から,運動による脂肪組織の適応は2型糖尿病モデルマウスの糖代謝,炎症応答を部分的に改善したが,うつ・不安調節に及ぼす影響についてはさらなる検討が必要であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画では,運動で鍛えられた脂肪組織が糖代謝異常によるうつ・不安を改善するかどうかを明らかにすることを目的としていた.研究代表者の所属機関変更と緊急事態宣言の影響で,研究の着手には大幅な遅れが生じた.しかしながら,実験環境のセットアップ,当初計画していた2型糖尿病モデル動物を用いた検討,ならびに2021年度上半期の計画の一部を遂行することができた.次年度予定の計画も現在進行中であり,そのため,当初の計画通りおおむね順調に進展していると判断された.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で,運動脂肪移植はうつ・不安様行動を改善することを報告し,本年度はレプチン受容体欠損により重度の高血糖を示すdb/dbマウスを用いた検討を行った.次年度は,食餌誘発性の肥満マウスにおける実験を検討している.また,運動による脂肪組織の適応がうつ・不安を改善する分子機序を明らかにするため,運動誘発性アディポカイン候補の組換タンパク質投与実験や海馬におけるRNA-seq解析を計画している.本実験は,既に一部のデータを得るに至っているため順調に進行すると予想される.
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Research Products
(1 results)