2022 Fiscal Year Research-status Report
傷つきやすいアスリートのための効果的な心理サポートの解明とその応用
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20K19517
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
山口 慎史 順天堂大学, 大学院スポーツ健康科学研究科, 特任助教 (60847630)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 傷つきやすさ / メンタルヘルス / 抑うつ症状 / 希死念慮 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は2021年度に引き続き、「競技活動の実施によるヴァルネラビリティの変化の証明」をテーマに研究を進めていった。アスリートが競技場面で感じる傷つきやすさを測定しつつ、傷つきやすい状態にいる際、どの程度メンタルヘルスを害しやすいのか、その特徴について検討した。具体的には、ヴァルネラビリティ(傷つきやすさ)に関連する心理的要因との関係性や影響に見るにあたり、ヴァルネラビリティと抑うつ症状の因果関係の推定や、傷つきやすい者はメンタルヘルスの悪化や抑うつ症状のリスクがどの程度あるのか、そのリスク推定等を行った。その結果、ヴァルネラビリティと抑うつ症状の因果関係の推定では、ヴァルネラビリティが原因となる変数、抑うつ症状が結果となる変数といった必要な有意差が確認され、因果関係を推定することができた。また、傷つきやすい者は傷つきにくい者に比べて、約2倍もメンタルヘルスを害しやすく、抑うつ症状も呈しやすいことが明らかとなった。 2022年度は、上記のように競技場面の傷つきやすさだけではなく、2021年度に開発した日常生活で感じる傷つきやすさに関する指標(2022年度に国際誌にてアクセプト済み)を活用し、日常場面での傷つきやすさに関連する心理的要因を検討していった。2021年度では本指標を用いて抑うつ症状との関連が明らかとなっていたが、抑うつ症状よりも重篤な心理状態である希死念慮(死にたいと思う状態)に着目し、傷つきやすさと希死念慮の関係性を検討した。その結果、傷つきやすさと希死念慮には正の関連があり、傷つきやすい者ほど希死念慮が高いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は2021年度に引き続き同様の研究テーマ(目的)で実施していった。コロナ禍により、一般大学生と大学生アスリートの比較ができなかったが、日常場面の傷つきやすさを測定する指標を大いに活用し、一般大学生のみを対象とした傷つきやすさに関する調査を実施することができた。一般大学生に関する研究結果では、大学生アスリートと類似する点もあり、大学生アスリートのみならず一般大学生に関する知見も蓄積させることで、傷つきやすさに関する幅広い視点の考察が可能となった。また、2022年度はこれまでの研究成果を論文として何本か完成(アクセプト)することができ、これらの面からも2022年度は進展したと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度では、2022年度に引き続き、大学生の傷つきやすさについてさらなる知見を蓄積していく。これまでの成果として、ヴァルネラビリティ(傷つきやすさ)とメンタルヘルス、抑うつ症状との関連性や影響について明らかにすることができたため、2023年度では、昨年用い始めた希死念慮との関連について、一般大学生や大学生アスリートを対象に調査を進めていく。具体的には、傷つきやすい者は抑うつ症状を呈しやすくその結果として死にたがってしまうのか、といった3つの変数の関係性について検討していく。また、傷つきやすい者の希死念慮のリスク推定等も行い、メンタルヘルスの解明と心理サポートの構築へとつなげていく。加えて、本研究課題は2023年度で最終年度となるため、これまで得られたデータを分析し、国内外の学術雑誌に順次、投稿していく。
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Causes of Carryover |
2022年度はコロナウイルス感染症の影響が少しずつ緩和し、国内の学会については現地に行くことができたが、国際学会についてはオンラインで参加したため、旅費や宿泊費等の高額の出費が発生しなかった。また、アンケート調査についても紙媒体での質問紙調査ではなく、web調査を行ったため、費用の削減となった。これらのことから、申請当初想定していた使用額よりも少ない額となった。
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