2021 Fiscal Year Research-status Report
泳動作中の肩峰下空間距離を推定する手法の開発と肩障害の発生要因解明への応用
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20K19523
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
三瀬 貴生 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (00740888)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 競泳 / 肩関節障害 / 若年競泳選手 / 肩甲骨挙動 / Scapular Dyskinesis |
Outline of Annual Research Achievements |
競泳では肩障害の発生頻度が最も高く、肩峰下空間距離(SSD)の狭小が関与している。SSDは肩甲骨の運動が影響し、泳動作時の肩甲骨運動を計測することで、SSDの狭小に関係する動作の特徴を特定することが本研究の目的である。 昨年度までに肩甲骨運動とSSDとの関連性について検証するため、3次元動作解析と超音波エコーを組み合わせた実験デザインを計画していた。しかしながら、マーカー貼付とエコー検査を同時におこなうための技術的な問題を解決することが難しく、代替案として肩甲骨の異常運動(Scapular Dysikinesis;以下SD)に着目した。SDを有する者は、SSDの狭小化に関連する運動である肩甲骨の内旋および前傾が増大すると報告されていることから、SDの有無による泳動作中の筋活動と肩甲骨運動の違いを比較検証してきた。その結果、SDを有する者は水を掻き始める局面で肩甲骨上方回旋の減少と内旋の増大を示すことが明らかとなった。SSDの狭小に関連する肩甲骨の運動としては、上肢を挙上した際に上方回旋の減少、内旋の増大、前傾の増大が出現することがいわれている。水を掻く泳動作では、上肢を挙上した肢位から水を掻き始めるため、この局面でこれらの肩甲骨運動が出現した場合、SSDの狭小する可能性が考えられる。加えて、若年競泳選手においてSDの保有率を調査したところ、肩関節の外傷・障害の既往歴を有さない選手においても出現することが明らかとなった。若年競泳選手においても、肩関節障害は発生頻度が高いことから、SDと障害発生およびSSDとの関連性を今後、検証していくことが求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超音波診断装置を用いた肩峰下空間距離(SSD)の計測と、上肢の挙上角度と肩甲骨挙動の3次元解析を同時におこなうことは、肩部に貼付したマーカーとエコーのプラグの衝突が生じるため、技術的な問題があった。この問題解決を試みたが、適切な方法を見いだせなかったため、現在は肩甲骨の異常運動(Scapular Dysikinesis;SD)に着目する方向性に修正し、おおむね順調に進めることができている。これまでに、若年競泳選手を対象に泳動作中の肩甲骨挙動の3次元解析をおこない、SDの有無による比較をおこなってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
SDは肩甲骨の内旋、前傾運動の増大を伴う異常運動が生じることが特徴として報告されている。これらの異常運動はSSDの狭小化に関連することが、報告されているが実際に検証はされていない。また、肩関節における外傷・障害の既往歴を有さない若年競泳選手においてもSDがみられていることから、SDは外傷・障害発生に影響してくる可能性が考えられる。今後は、若年競泳選手を対象にSDの有無によるSSDの違いについて検証し、外傷・障害発生との関連について前向きに調査していく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で学会の開催がオンライン形式となっているため、旅費を使用できない状態が続いてきたことが要因である。また、謝金においても感染予防対策から測定を研究代表者1人で実施してきており、謝金の発生がなかったことがある。しかしながら、現在はScapular Dysikinesisの解析に複数名が必要であったことから謝金の支払いを行う予定である。また、今年度は現地開催の学会がいくつかあるため、使用する予定はある。それでも余る場合は、効率的な研究環境を整備するため必要な資料や備品などを揃える予定である。
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