2020 Fiscal Year Research-status Report
視覚障がい者における水泳スキルおよび水泳周辺スキルの評価
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20K19528
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
谷川 哲朗 大阪国際大学, 人間科学部, 講師 (90615452)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 視覚障がい者 / 水泳 / 移動距離 / 泳速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,視覚障がい者の水泳スキルおよび水泳周辺スキルを評価し,視覚障がい者の競技力向上の方法とそれに応じたタッパーのサポート方法を明らかにすることを最大の目的とした。これらの課題を明らかにするため,1年目は、レース中の蛇行距離やレーンロープに接触するなどした際にどの程度速度が減速するのかを評価することを目的として、実際のレースで測定を行った。対象は、2021年3月に開催された「第37回日本パラ水泳選手権大会」における視覚障がい(全盲)S11クラス50m自由形に出場した女子1名とした。進行方向に対して右側の観覧席最上段から2台のカメラ(Panasonic社製,BGH-1、サンプリング周波数59.94Frame/s)を用いて、スタートからゴールまでが撮影されるように画角を固定して設置した。水泳運動が進行方向をY軸、進行方向に対して左右方向X軸とする二次元平面で運動が行われていると仮定し、二次元DLT法を用いて実長換算を行った。測定項目は、泳者の頭部の泳速度(m/s)、移動距離(m)、ストローク長(m/stroke)、ストロークタイム(s/stroke)を算出した。 レースの結果、対象者は蛇行して泳ぎ、56.42mの距離を泳いだ。本レースの対象は50m自由形であったが、6.42m余分に泳ぐ結果となった。本測定の結果により、視覚障がい者のレースで泳いだ距離を定量化することができた。スタートからゴールまでの平均泳速度は1.55m/sであったが、42m付近でレーンロープに接触があり、泳速度が1.37m/sとなった。レーンロープの接触の程度によって減速の程度は異なると考えられるが、本測定の成果により視覚障がい者のレースで接触があった際の泳速度の減速を定量化することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目の計画は,実際のレースを測定するフィールド実験として実施する計画であった。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、活動が制限され、多くの大会が中止された。2021年3月に大会が実施されたため、測定・分析を行うことができたが、学会発表は論文投稿など、成果報告ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本測定の結果により、視覚障がい者のレース中における泳速度の変動を計測し,蛇行する距離やレーンロープに接触した際に,どの程度速度が減速するのか定量化することができた。しかし、定量化するための分析には多くの時間がかかり、レース分析として選手にフィードバックすることができない。分析の精度を確保しつつ、即時にフィードバックができるシステムを構築することが課題である。 2年目は、フィニッシュ局面に着目する。視覚障がい者が泳ぐ際には、視覚障がい者自身が両サイドのレーンロープを探りながら泳ぎ,プールの壁際ではタッパーと呼ばれる晴眼者のサポーターがタッピングバーと呼ばれる棒で泳者に直接触れる(タッピングする)ことで、壁に近づいたことを知らせる。タッピングの方法は経験知のみによって行われ,選手の主観的評価のみで評価されてきた。そこで、2年目はタッピングのスキルを定量的にとらえ、タッピング方法を評価することを目的に、実験的に測定する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、様々な大会が中止となり、研究協力者の出張も大きく制限された。そのため、旅費、人件費を活用できなかった。人員が少ない場合でも測定できるように、物品等を多く購入し、対応した。
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