2020 Fiscal Year Research-status Report
高気圧高酸素条件下における持久的運動時のパフォーマンスと生体応答
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20K19545
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
竹澤 稔裕 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 助教 (10771967)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 常圧低酸素 / 低圧低酸素 / 運動パフォーマンス / 生体応答 / 気圧 / 吸入気酸素分圧 / 吸入気二酸化炭素分圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度においては,「Cardiorespiratory response and power output during submaximal exercise in normobaric versus hypobaric hypoxia: A pilot study using a specific chamber that controls environmental factors」をタイトルとして,論文の執筆を行なった.論文はHigh Altitude Medicine & Biologyにてアクセプトされた. 本研究は常圧低酸素環境と低圧低酸素環境内にて実施される運動中の生体応答やパフォーマンスについて基礎的知見を得るためのものである.これまで,上記に示した2つの環境条件では同一の生体反応が生じると考えられてきた.しかしそこには「気圧」の違いが生じることから,近年では懐疑的な研究も散見され始めている.そこで本研究では吸入気酸素分圧と吸入気二酸化炭素分圧に加え,温度,湿度,気流,景観に関しても同一に制御したチャンバーを作成し,常圧低酸素環境と低圧低酸素環境における運動時の生体応答の相違について検討した. 結果として2つの低酸素環境では相違が認められた.具体的には常圧低酸素環境で認められた呼気終末二酸化炭素分圧の減少が低圧低酸素環境では減弱され,換気応答の更新が抑制された可能性があり,加えて動脈血酸素飽和度,および高強度運動時の仕事率の更なる減少が認められた.この研究結果は今後,低酸素環境利用した運動トレーニングを処方する上で,重要な役割を担う内容だと言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度においては,測定準備として,倫理申請や測定設備・機材等の調整を中心に活動を行なった.倫理申請については,順天堂大学スポーツ健康科学部にて申請を行い,12月24日に承認を得た(順大ス倫第2020-24号). 測定設備においてはチャンバーのメンテナンス作業に時間を費やすことが多く,空気が漏れないよう細かな修繕と調整を行なった.中でも本研究にて独創的な方法と言えるガスボンベとレギュレータ付きガスマスクを利用した測定機材を,呼気ガス分析機に接続するシステムの開発に多くの時間を要した.次年度6月には設計した機材も完成し,本実験に向けた予備実験を開始する予定である.これまでに簡易的な予備実験を何度か行なってきており,仮説通りの結果となり得る可能性が示唆されている.その中で運動を遂行する気圧環境を1.5気圧から1.3気圧に変更し,測定を行うことを検討している.理由については,運動を行なっている被験者の呼気流動抵抗を考慮することや,1.3気圧においても十分な測定結果が示せる可能性が予備実験にて示されたからである.これについては新たな測定機材が完成してから再検討する必要があると感じる. 測定を記録するためのシートはエクセルにて作成し,いつでも測定可能な状況になっている.また測定をスムーズに行うための工程スケジュールも秒単位にて作成し,準備が整っている.未だにコロナウイルス感染症拡大が治る気配が感じられないが,本実験が開始される際には手際良く測定に移れるように準備を行なった.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本実験に向けて,被験者の募集に力を入れる必要がある.被験者は運動習慣のある大学生を対象としているが,大学では現在もオンラインにて授業が展開されており,通学して授業を受ける学生は極めて少ない.また学生の運動習慣も例年と比較して頻度が少なくなっていることから,被験者については慎重に選定したい. また測定機材の調整も合わせて進めていきたい.直近では新たに作成したガスボンベとレギュレータ付きガスマスクの試験をする必要がある.早い段階で本実験が開始できるよう微調整することが大切である.その後は被験者と測定環境を鑑みて,方法の修正も視野に入れている.無理のないスケジュールや負荷で測定ができればと考えている. 次年度中には本実験を全て終了し,データ解析を進めていきたい.加えて,関連した研究概要を国際誌に投稿することも考えている.多くの人に研究活動内容を周知していきたいと感じる.
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Causes of Carryover |
関連論文の投稿を試みたが,投稿先から返信が無かったため,次年度使用額が発生してしまった.次年度は投稿先の掲載費用として利用する予定である.
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