2020 Fiscal Year Research-status Report
低温環境下におけるふるえ発生メカニズムの解明-皮膚温度受容器の役割に着目して-
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20K19564
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
藤本 知臣 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助教 (70847798)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 低体温症 / TRPチャネル / 皮膚温度感覚 / メントール / カプサイシン / ふるえ / 運動パフォーマンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、皮膚の温度センサーであるTRPV1およびTRPM8に着目し、皮膚温度センサーからの入力刺激の変化が体温低下時のふるえの特性や低水温環境下での運動時の生理応答および運動パフォーマンスに及ぼす影響を解明することとした。 当該年度は、43℃以上の熱刺激で活性化される温度センサーであるTRPV1チャネルを、皮膚にカプサイシン (温度変化に関わらずTRPV1チャネルを活性化するアゴニストとして知られる) を塗布し、皮膚からの温感の入力を高めることで体温低下時のふるえや過度な代謝の増加を抑制することができるのか検討する予定であった。しかしながら、本実験を通して、使用するTRPV1およびTRPM8のアゴニストであるカプサイシンおよびメントールの濃度が非常に重要なため、予備的な実験として本研究で計画している濃度のカプサイシンおよびメントールを皮膚に塗布することによって、温感や冷感を感じ始める皮膚温度感覚閾値が変化するかどうかを検討した。実験では、0.1%濃度のカプサイシン溶液および0.5%濃度のメントール溶液を使用し、それぞれ塗布前後の皮膚温度感覚閾値を測定した。また、その時の食道温、皮膚温、心拍数および動脈血圧などを測定した。その結果、0.1%濃度のカプサイシン溶液塗布によって皮膚温感閾値が低温側にシフトしたが (温かさを感じやすくなる)、0.5%メントール溶液の塗布によって冷感閾値は変化しなかった。そのため、メントール溶液の濃度を3%に高めて再度検討した結果、3%濃度のメントール溶液塗布によって皮膚冷覚閾値が高温側にシフトした (冷たさを感じやすくなった)。これらの結果から、本研究では、0.1%カプサイシン溶液および3%メントール溶液を使用して実験を行うこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、皮膚へのカプサイシン塗布が安静冷却時のふるえの特性に及ぼす影響について検討する予定であったが、本研究ではカプサイシンおよびメントールの塗布によって皮膚からの温度入力を変化させることができるかどうかが非常に重要なため、本研究を通して使用するカプサイシン溶液およびメントール溶液の濃度を決定するための予備的な実験を行った。その結果、0.1%カプサイシン溶液および3%メントール溶液を使用することで皮膚の温度感覚閾値を変化させることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度で決定した濃度のカプサイシンおよびメントール溶液を用いて、予定通り体温低下時のふるえの特性や冷水下での運動パフォーマンスに及ぼす影響を検討していく予定である。具体的には、腹部までの安静冷水浸水 (水温20℃程度) を行い、深部体温を徐々に低下させた場合のふるえの特性 (食道温と酸素摂取量および筋活動の関係からふるえが開始する深部体温の閾値、体温低下に伴うふるえの増加の程度を評価) について検討する。実験は浸水開始15分前にカプサイシンを含まない溶液 (コントロール溶液) もしくは濃度0.1%のカプサイシン溶液を上半身に塗布する2条件を行う。実験中、食道温 (深部体温)、酸素摂取量、胸部および上腕部の筋活動、全身の温度感覚などを測定する。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナウイルス感染症の影響で、学会参加などの費用が支出できなかったため、次年度以降に繰り越すこととする。次年度以降は、学会参加が可能な場合はその旅費や参加費として、学会などの旅費が支出できない場合は実験で使用する消耗品の購入などに充てることとする。
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