2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K19567
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
田中 嘉法 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 研究員 (40791249)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨格筋 / ミトコンドリアCa2+ / In vivoイメージング / 筋疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,代謝産物の一つである「乳酸」は筋疲労時に疲労を助長するのではなく,疲労の軽減に寄与していると考えられるようになってきた.本研究は,この機構を解明するために骨格筋細胞内の乳酸塩の動態を可視化することに着手している.さらに,乳酸の代謝には筋内のミトコンドリアが重要な役割を果たしていることから,筋収縮時のミトコンドリア機能についても検討を加えた.前年度においては,ミトコンドリア内のTCA サイクルの酵素活性を制御し,エネルギー調節に直接的な関与が考えられるCa2+に注目した. in vivo環境下でミトコンドリア内のCa2+動態を観察するためのマウス実験モデルを確立した.このモデルでは,Ca2+感受性蛍光タンパク質である4mtD3cpVをミトコンドリアマトリックスに局在させる.筋収縮の過渡応答としてのミトコンドリア内Ca2+動態及び,筋発揮張力変化を観察した.その結果,収縮開始時に同期したミトコンドリア内Ca2+レベルの有意な上昇を観察し,そのCa2+レベルは収縮終了時まで維持されることが明らかになった.その一方で,ミトコンドリア内へのCa2+輸送を担うMCU(mitochondrial Ca2+ uniporter)阻害によって,収縮時のCa2+レベルの上昇が抑制され,筋発揮張力の有意な低下が観察された.ミトコンドリア内Ca2+濃度が筋発揮張力に直接的な影響を及ぼす可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度においては「in vivo環境下でのミトコンドリア内Ca2+観察モデルの確立」の研究課題に取り組んできた.乳酸の処理において重要な役割を果たしているミトコンドリアの機能解析によって,乳酸と筋収縮との関係性を解明できる可能性がある.これまでに実績がある乳酸及びグルコースのin vivo観察モデルの作成方法を応用し,ミトコンドリア内Ca2+モデルの作成に着手した.その結果,Ca2+感受性蛍光タンパク質である4mtD3cpVをミトコンドリアマトリックスに局在させることに成功した.このモデルを用いて,筋収縮時のミトコンドリア内Ca2+動態を評価した.その結果,収縮によるミトコンドリア内Ca2+レベルの有意な上昇が電気刺激のタイミングとほぼ同期することを明らかにした.さらに,そのCa2+レベルは収縮終了時まで維持されることが明らかになった.また,ミトコンドリア内へのCa2+輸送を担うMCU(mitochondrial Ca2+ uniporter)阻害によって,収縮時のCa2+レベルの上昇が抑制され,筋発揮張力の有意な低下が観察された.ミトコンドリア内Ca2+濃度が筋発揮張力に直接的な影響を及ぼす可能性が示された.今後の課題として,ミトコンドリア機能を中心としたグルコース-乳酸-TCAサイクルの関係性の追求が必要である.そこで,研究の実施期間を延長し,追加実験を計画した.
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリア機能を中心としたグルコース-乳酸-TCAサイクル(Ca2+動態)の関係性の追求が必要であることから,これらの代謝物を可視化するマルチイメージングを展開する予定でいる.細胞質内のグルコースならびに乳酸動態とミトコンドリア内Ca2+動態を比較すことによって,乳酸が筋パフォーマンス(発揮張力)に寄与するメカニズの解明に発展することができる.
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Causes of Carryover |
前述した通り,昨年度はCa2+感受性蛍光タンパク質である4mtD3cpVをミトコンドリアマトリックスに局在させることに成功したが,乳酸との関係性を追求することはできなかった.この理由として,ミトコンドリア内Ca2+モデルの作成において,可視化の最適化要件となるプロトコール作成に予定を超える期間が必要であり,他の実験が実施できなかった.そのため,年度の当初に予定した経費を次年度の追加実験における試薬や実験動物の購入費用に充当する.
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