2020 Fiscal Year Research-status Report
筋機能および筋パワー発揮特性と活動後増強効果の関連性
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20K19571
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
砂川 力也 琉球大学, 教育学部, 准教授 (50434163)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 活動後増強 / 筋機能特性 / レジスタンストレーニング / 速度基準 / 筋パワー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、活動後増強の効果について、筋パワー、力および速度に着目し、レジスタンスエクササイズの重量、回数、セット数、休息時間などのトレーニング変数との関連を調べ、筋形態および筋機能特性から個人差の影響を明らかにすることを目的に検証を行った。令和2年度は、個々の筋機能特性についてエクササイズ変数と運動力学的変数を中心に基礎的知見を集約するとともに筋の発揮パワーおよび挙上速度に着目し、活動後増強効果の普遍性と個別性を明らかにするための実践的な研究を行った。 スクワットの重量および挙上速度の違いが活動後増強に与える影響について検証した結果、60%1RMの高速条件後にCMJの跳躍高(ES = 0.45)、ピーク速度(ES = 0.65)、ピークパワー(ES = 0.38)、平均パワー(ES = 0.58)が有意に高い値を示した.このことから中負荷のスクワットを用いたPAPの誘発には、少なくとも挙上動作中の速度を最大にする必要性が示唆された。 低負荷でのスクワットにおける挙上速度および仕事量の違いが活動後増強に与える影響について検証した結果、スクワットジャンプ高速条件後にCMJの跳躍高(ES = 0.57)、平均パワー(ES = 0.58)、ピークパワー(ES = 0.44),平均速度(ES = 0.51)、ピーク速度(ES = 0.31)が有意に高い値を示した。一方,仕事量を半減させたスクワットジャンプ高速条件ではCMJの変化は認められなかった。このことから低負荷を用いたPAPの誘発には、コンセントリック局面において減速することなく最大努力で挙上し、少なくとも6回の反復回数で複数セットの運動課題が必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を遂行するにあたり、測定方法の確立、再現性、妥当性の検討は十分に進んでおり、リニアポジショントランスデューサーを用いて、必要なデータ取得は円滑に行えている。活動後増強に関連する動作解析や筋電図解析について、妥当性ならびに再現性を確認中ではあるが、現時点において、十分な成果と進行状況である。さらに、次年度以降に予定している実験課題に対する予備実験についても順調に進んでおり、一部データの取得も終了し、現在は解析中である。研究開始当初は、コロナ禍による影響で一時研究活動の中断をせざるを得なかったが、感染症拡大防止対策を徹底した上で、研究に従事することができた。研究に必要なサンプリングについて、限られた時間と環境の中でも順調に行えた。その理由の一つに多くの学会がオンライン形式を採用していたため、計画されていた出張費の一部を雇用費に充てることができたため、研究開始の遅れを補うことができた。また、これらの研究成果を2編の学術論文にまとめ発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は「活動後増強の最適化」に関する変数としてレジスタンストレーニングの速度に着目した実験プロトコルの確立を目指すことが最大の課題となる。これまで、エクササイズ変数に着目し、様々な重量、回数、セット数の組み合わせから、活動後増強に与える影響について研究を進めてきた。現在は、収集済みのデータを分析し、挙上速度や速度低下率などについて考察しているが、活動後増強には特定の個人差が生じる可能性が非常に高いことが推察される。さらに、エクササイズを実施するタイミングによっては活動後増強の有無や増減が存在することが考えられ、新たな知見を得られる可能性が高い。したがって、今後は活動後増強効果の「個別性」に着目し、研究を推進する予定である。 令和3年度以降は、速度基準のトレーニング効果と活動後増強の普遍性を明らかにするためにレジスタンストレーニングの経験を有する30名の成人男性を対象に運動力学的変数のパラメータを中心とした項目を分析し、活動後増強効果の再現性や恒常性について検討する。具体的には(1)速度基準のトレーニングにおける速度損失率の違いが筋機能特性に与える影響について、3つの速度損失率を用いて、トレーニング効果の違いを検証する。(2)速度基準のコンディショニング活動が活動後増強に与える影響について、トレーニング経過を観察し検討する。
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Causes of Carryover |
今年度に必要な研究費に関して、学会等がオンラインの開催となり旅費がほとんど不要となった。そのため、研究を円滑に進行する目的で人件費や消耗品等の支出に充てたが、4000円程度の差額が生じた。今年度の研究計画に大きな影響はないため、次年度分への繰り越しについては、主に少額の予算区分(消耗品、学会発表費、投稿論文)において、使用する予定である。
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