2021 Fiscal Year Research-status Report
健康寿命延伸に貢献する「美しい歩き方」の定量的評価
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20K19588
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
齊藤 亜由子 工学院大学, 先進工学部, 助教 (90710715)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 美しい歩き方 / 歩行計測 / 歩行解析 / 関節角度 / 感性評価 / 主観評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度はNPO法人ウェルネスビューティウォーキング協会様のご協力により,モデル経験のあるウォーキング講師3名(男性1名,女性2名)を対象にした「姿勢の良い歩き方」,「姿勢の悪い歩き方」の歩行計測を行った.姿勢の良し悪しに関する定義は,骨盤の自然傾斜角を維持し背筋を伸ばす歩き方を「姿勢の良い歩き方」,骨盤を可能な限り後傾させ猫背を維持する歩き方を「姿勢の悪い歩き方」と定義した.また,歩行速度の違いによる印象の違いを検証するために,3種類の速度(60bpm,90bpm,120bpm)での歩行を計測した.90bpmは街を歩く人の平均的な歩行速度4.0 km/h(歩幅を75cmとした場合)であり今年度は実験参加者のうち女性1名分の90bpmにおける二種類の歩き方の解析を行った.関節角度の結果より,本計測における二種類の歩き方においては体幹角度,骨盤傾斜角, 膝関節角度,足関節角度に大きな差異を確認することができた.特に「姿勢の悪い歩き方」における膝関節,足関節の状態は常に屈曲しており,主観評価において「美しくない」印象を与える可能性があると考えられる.さらに歩行計測において撮影した女性1名分の2種類の歩き方に対し回答者50名程度の小規模なアンケート調査を行った.アンケート項目では令和2年度に作成した予備アンケートを参考に,歩き方の評価に適した9語「好き」「美しい」「上品だ」「安定」「柔らかい」「落ちつきがある」「快い」「魅力的」「健康」を5段階評価で回答してもらう形とした.アンケート結果より,背筋をのばし,一歩行周期の中で脚部の屈曲伸展を明確に表現する歩き方は,「美しい」「上品だ」「魅力的」「健康」な印象を強く与えることが示唆された.一方,猫背で,脚部の屈曲伸展が明確でない歩き方は,「美しくない」「上品でない」「魅力的でない」「不健康」な印象を強く与えることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は計画通りに歩行計測,アンケート作成を行うことができた.歩行計測はモデル経験があるウォーキング講師の方に計測参加を依頼することで,様々な歩き方の知見を得るとともに,複数回の計測においても再現性のある歩行動作を計測することができた.さらに,作成したアンケートを用いて回答者50名に対し歩き方の主観評価を行ってもらった.アンケート結果から,「姿勢の良い歩き方」,「姿勢の悪い歩き方」が第三者からどのように評価されるのか傾向を知ることができた.今年度の歩行解析・アンケート調査は実験参加者のうち女性1名分の一つの歩行速度のデータに対してのみ行ったが,解析方法やデータのまとめ方に関する知見を得ることができたため,次年度は他2つの歩行速度のデータに対する解析や,実験参加者他2名のデータに対する解析を行っていく.今年度の研究成果は,国内会議2件(日本機械学会 2021年度 年次大会,Dynamics and Design Conference 2021)と国際会議1件(20th International Symposium on Advanced Technology)にて発表しており,現在は査読付き論文誌に1件投稿中である.以上より,令和3年度の計画は概ね予定通り進んでおり,次年度以降の計画遂行のための準備も完了していることからおおむね順調と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は令和3年度に計測した未解析の歩行計測データの解析を完了し,性差によらない美しい歩き方の要素を明らかにする.性差によらない「姿勢の良い歩き方」,「姿勢の悪い歩き方」の特徴は,男性ウォーキング講師と女性ウォーキング講師の運動学的データの比較により検証する.さらに,歩き方に対する主観評価では,回答者の属性による主観評価の傾向の違いについても考察する.そのため,歩き方の印象に関するアンケート調査では,様々な年代の男女に対し参加いただけるようにアンケートの外注も視野に入れている. 主観評価のためのアンケート調査では,歩行の動画だけでなく,任意の局面の,任意の身体部位の静止画なども用いることで,美しさの認識と紐づく歩行中の具体的な動作・姿勢の要素を明らかにする.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で,追加実験の計測施設への出張,および国際会議参加のための出張がなくなり,旅費を使用しなかった.そのため次年度使用額が生じたが,次年度可能であれば追加の歩行計測,および国際会議への出張を行い,次年度使用額として繰り越した分を使用する.出張に使用できなかった場合は,アンケート回答者の募集を外注し,回答者を可能な限り増やすことに予算を使用する.
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Research Products
(3 results)