2020 Fiscal Year Research-status Report
軽度な高気圧酸素を使用した高強度運動後のリカバリー方法の検討
Project/Area Number |
20K19590
|
Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
竹村 藍 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ研究部, 契約研究員 (20845903)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 軽度な高気圧酸素 / 酸化ストレス / コルチゾール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、軽度な高気圧酸素への滞在が、高強度運動後のリカバリーに対して及ぼす影響を明らかにする。今年度は、軽度な高気圧酸素が、高強度運動後の身体ストレス (酸化ストレス・コルチゾール・αアミラーゼの分泌) に及ぼす影響を明らかにした。被験者は、1時間にわたって予備心拍量の75%の負荷のペダリング運動を行った。その後、被験者は1時間にわたって、 1気圧、20.9%酸素の通常環境、または、1.3気圧、31.0%酸素の軽度な高気圧酸素の環境下に滞在した。 高強度運動後には、両群ともに酸化ストレスが上昇したが、1時間にわたる通常環境、及び、軽度な高気圧酸素の環境への滞在後の酸化ストレスは、滞在前と比較して有意に低下した。酸化ストレスについて、条件間で有意な差は認められなかった。また、運動後に上昇した唾液のコルチゾール濃度は、軽度な高気圧酸素の環境への滞在後に有意に低下した。一方で、通常環境への滞在群では、運動または環境下の滞在によるコルチゾール濃度の変化は認められなかった。αアミラーゼ濃度は、運動前と比較して運動後には有意に上昇し、 1時間にわたる両環境下の滞在後も高い値を保っていた。 これらのことから、高強度運動後の高い酸化ストレスに対して、軽度な高気圧酸素への滞在は酸化ストレスの上昇を引き起こさないことが明らかとなった。そのため、本研究で用いた気圧や酸素濃度は、高強度運動後のリカバリーに使用しても、酸化ストレスの副作用は生じないと考えられる。また、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌は、1時間にわたる軽度な高気圧酸素の環境への滞在後に低下することが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軽度な高気圧酸素は高強度運動の後に及ぼす影響について、酸化ストレスやその他のストレスホルモンへの影響を明らかにすることができた。また、軽度な高気圧酸素が心循環器へ及ぼす影響について明らかにするために、血圧の変化を測定する準備も順調に進められている。これらのことから、研究は問題なく順調に進めることができていると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、高強度運動後のリカバリーに対する軽度な高気圧酸素への滞在による影響を明らかにする。高強度運動後には、心拍数の上昇などの心循環器系の変化や、骨格筋への酸素供給の増大が生じる。そのため、軽度な高気圧酸素によるリカバリーへの影響を明らかにするためには、心循環器系や骨格筋での環境応答について明らかにする必要がある。 今後の研究では、1.3気圧、約30%酸素の軽度な高気圧酸素環境下への滞在が、心拍数や血圧 (収縮期、及び、拡張期血圧) 、骨格筋への酸素供給に及ぼす影響について明らかにする。また、被験者の特性 (性別や通常血圧、骨格筋量など) と、軽度な高気圧酸素による上記項目の変化の関連についても検討を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、被験者数を限定した実験を行った。そのため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額については、研究課題の当初の予定通り、十分な被験者数を確保した実験を行う予定である。
|