2020 Fiscal Year Research-status Report
運動器総合強化のための空気圧式全身運動トレーニング装置の開発
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20K19594
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮嵜 哲郎 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 助教 (60734481)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 空気圧式全身運動トレーニング装置 / 運動器総合強化 / 筋力系トレーニング / 神経系トレーニング / 力覚提示による運動教示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「運動器総合強化のための空気圧式全身運動トレーニング装置の開発」の2020年度の研究実績は以下の通りである。当初の研究計画で2020年度に実施する予定であった、空気圧式全身運動トレーニング装置(スーツ型、没入型)の試作機をそれぞれ設計・開発した。また、これら実験装置の制御系を設計し、予備実験を実施した。具体的には、ロボットスーツ型装置を用いた走行トレーニングの補助効果検証実験と、没入型装置を用いた体幹バランス強化トレーニングの効果検証実験を行った。 走行トレーニングの実験では、ロボットスーツ型装置を装着した運動者の脚部に、人工筋の収縮力を制御して外力を与え、走行時の脚部負荷を調節可能とした。申請者のグループの先行研究では、ロボットスーツ型装置を用いて歩行時の脚部負荷を低減・増大させる方法を提案した。この方法を走行にも適用可能とするために、走行のための歩容フェーズ検知方法の開発と人工筋駆動タイミングの調整を行った。今回は走行時の脚部負荷を低減させることを目標とし、脚部筋電位を計測し、補助効果の実験検証を行った。4人の被験者のデータを計測した結果、全体的に筋電位の大きさが低下したことから、提案する走行支援が有効であることを確認した。この実験の成果をもとに雑誌論文を執筆し、現在査読審査を受けている。 また、没入型装置は最初の試作機として人工筋8本を運動者の腰部へ接続し、前後左右の任意方向に外力を与える装置を開発した。この装置を用いて、ランダムな方向とタイミングで運動者を引張る閉眼片脚立ちトレーニング実験と、バランスボード上の姿勢維持トレーニング実験を行った。それぞれの実験で、没入型装置を使用する群と使用しない群の比較を行った結果、没入型装置を使用した群では被験者の身体揺動が比較的短時間で低減した。この実験結果をもとに、国際学会および雑誌論文を今後執筆する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期の研究計画として、2020年度に(1)空気圧式全身運動トレーニング装置の機構設計・開発、(2)運動器総合トレーニングのための人工筋制御法の制御系設計、(3)実証実験の初期計画案を予定していたが、これらの計画はいずれも達成できたと考える。 課題(1)については、二種類のトレーニング装置、ロボットスーツ型装置と没入型装置の試作機を開発した。ロボットスーツ型装置の試作機は、装着者の脚部に長さ300mmの空気圧ゴム人工筋8本を装着し外力を与えるものである。没入型装置の試作機は、長さ800mmの長い人工筋8本を介して運動者の腰部ベルトと外周のアルミフレームを接続し、前後左右の任意方向に外力を与える装置である。 課題(2)については、ロボットスーツ型装置の制御系設計として、走行トレーニング用の歩容フェーズ検知方法の開発と人工筋駆動タイミングの調整を行った。没入型装置の制御系設計では、運動者の腰部に前後左右の任意方向に外力を与えるように人工筋を駆動する制御系を開発し、ランダムな方向とタイミングでの外力印加と、押しボタンスイッチ4つの押下パターンにより方向とタイミングを決定する外力印加を実現した。 課題(3)について、ロボットスーツ型装置では走行時の脚部負荷を低減させることを目標とし、脚部筋電位を計測し、補助効果の実験検証を行った。4人の被験者のデータを計測した結果、全体的に筋電位の大きさが低下したことから、提案する走行支援が有効であることを確認した。没入型装置の実験では、ランダムな方向とタイミングで運動者を引張る閉眼片脚立ちトレーニング実験と、バランスボード上の姿勢維持トレーニング実験を行った。それぞれの実験で、没入型装置を使用する群と使用しない群の比較を行った結果、没入型装置を使用した群では被験者の身体揺動が比較的短時間で低減することを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で得られた研究成果について、雑誌論文や国際会議などで発表していく準備を行っている。ロボットスーツ型装置の走行トレーニング実験の成果をもとに雑誌論文を執筆・投稿まで完了しており、現在査読審査を受けている。没入型装置の実験結果については、現在までの結果をまとめ、国際学会論文および雑誌論文を今後執筆する予定である。 上記に加え、2021年度の研究の推進方策として、空気圧式全身運動トレーニング装置の機構改良と、制御系の改良、そしてこれらを用いた新たな実証実験を予定している。具体的には、ロボットスーツ型装置は、現在の仕様では装着者の脚部にのみ外力を与える機構だが、人工筋を上半身にも装着可能なように改良する。これにより、腕の運動もターゲットとしたトレーニングが可能となり、そのための制御系・アルゴリズムも併せて開発する予定である。また、没入型装置では腰部以外への外力印加も可能となるように、上半身や脚部などに段階的に人工筋を増設していく予定である。上記のような改良型機構を開発したのち、これらを用いて力覚提示による全身運動教示が可能かどうか、実験を通して検証していく予定である。 今後予想される研究遂行上の課題として、COVID-19感染拡大防止の観点から大学への入構が制限され、実験計画の見直しが必要となる可能性がある。もしこのような制限が必要となった場合でも、オンサイト実験の実施時間や日数を最小限にし、実験環境が密とならないようにするなど、事態に柔軟に対応しつつ本研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
申請時に購入予定であった設備備品について、交付決定後に販売業者様と話し合った結果、型番の変更や割引適用などを行った。その結果、今年度予算の執行予定額と実際の執行額との間に差が生まれ、8585円の次年度使用額が生じた。
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Research Products
(1 results)