2021 Fiscal Year Research-status Report
暑熱下における運動間の休息中の暑さ対策の新提案-身体冷却法の組み合わせに着目して
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20K19599
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柳岡 拓磨 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (20846951)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 暑熱環境 / ハーフタイム / 運動能力 / 体温 / 体格 / 熱中症予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱中症による救急搬送者数は急増しており、直近の5年間で約2倍となっている。地球温暖化の進行とともに、熱中症の問題はさらなる深刻化が想定され、科学的知見に基づいた熱中症予防対策の検討が急務である。身体冷却は暑さ対策の手法の一つであり、運動前もしくは運動中の有効な身体冷却法の検討が広く行われてきたものの、運動間の休息中に着目した研究は少ない。そこで、本研究では、1) 運動間の休息中に行う身体外部・内部冷却の組み合わせが体温、運動能力に与える影響をメカニズムも含め明らかにする、2)運動間の休息中の身体冷却に関する性差を明らかにすることを目的としている。 2020-21年度には、実験室ベースにおける身体冷却効果とそのメカニズム・性差の検討を行った。暑熱環境下(気温 35度、湿度 50%)における2条件の無作為化交差試験を男性20名、女性10名に対して実施し、アイススラリー摂取およびクーリングベスト着用の組み合わせの効果を検討した。その結果、男性ではアイススラリー摂取およびクーリングベスト着用の組み合わせによって、無冷却条件と比較し、その後の深部体温が低下し、持久的運動パフォーマンスが改善された。一方で、女性では深部体温は低下したものの、持久的運動パフォーマンスの改善は認められなかった。 さらに、男性20名のデータを体格(体表面積と体重の比)で2グループに分類し層別解析したところ、体格が大きいグループで体温や持久的運動パフォーマンスの改善の程度が大きいことが明らかとなった。外気温が運動中の皮膚温を超えない暑熱環境下(外気温35度程度)では、体格が大きいグループは深部体温が上昇しやすく、熱中症のリスクが高いことが予想されるため、本研究の結果は熱中症予防に重要な知見であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時の予定に対し、大きな変更がなく順調に進展しているため。申請当初は想定していなかった新規性のある知見を得られた点で、特に順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時に計画した通り、これまでの研究よりもスポーツ現場に近い設定での実験を行い、外的妥当性の担保された研究を実施していく。 また、申請当初は想定していなかったが、本研究で得られた学術的新規性の高く、臨床的価値のある「身体冷却効果の体格差」にも着目していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:主に研究成果発表に関する残高である。国際学会および国内学会はオンラインでの開催となり、旅費が未使用となった。付け加えて、国際雑誌に論文を投稿しているが、査読に長い時間を要しており、オープンアクセス費や英文校正費が未使用となったためである。 使用計画:国際誌へ複数論文を投稿し、そのオープンアクセス費として使用する予定である。また、国際学会へも積極的に参加する予定である。
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