2021 Fiscal Year Research-status Report
直立姿勢制御の共通神経基盤の解明と姿勢トレーニングへの応用
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20K19602
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
鈴木 伸弥 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 講師 (20803654)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ニューロリハビリテーション / 姿勢制御 / ニューロモデュレーション / 神経可塑性 / トレーニング / バランス / 歩行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒトの多様な姿勢制御戦略に共通する神経基盤の一つとして、大脳皮質運動野を中心とする神経ネットワークの機能に焦点を当て、さまざまな姿勢課題に共通する脳機能を同定することが主要な目的である。 そこで、本年度は、昨年度から着手した異なる姿勢課題間に共通する神経基盤の同定に関する研究を継続して実施した。具体的な方法として、まず、健常者を対象に、立位動的バランス保持課題ならびに歩行課題を行い、パフォーマンスが安定するまで練習を行い、行動を獲得させた。その後、対象者がこれらの課題を実施している最中に、体幹・下肢筋群から筋電図の多チャンネル同時記録を行い、筋活動の時系列データを収集した。次に、数理的手法を用いて、得られた時系列データの時空間的構成要素を分離・抽出した。そして、抽出した要素を用いて、各筋の時系列データを再構築し、元のデータに対する相関を検証した。その結果、各課題で4~6つの要素を用いて再構築すると、元のデータとの高い相関がみられた。元の情報よりも少ない数の時空間的構成要素によって、それらを再現可能であることが示唆された。さらに、各対象者・各課題で得られたこれらの要素を集約し、クラスタリングした結果、そのいくつかは、課題が異なるにもかかわらず、共通するクラスターに分類されるものがあった。つまり、これらの結果は、各種姿勢課題の遂行中にみられる筋活動の基本的構成要素が課題間で一部共通していることを示唆するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、非侵襲的脳機能修飾法を用いて大脳皮質一次運動野の興奮性を一過性に修飾した際に、様々な姿勢課題におけるパフォーマンスの変化を調査する予定であった。しかしながら、本年度も、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、必要数の対象者の組み入れが困難であった。現在のところ、少数例での検討ではあるが、脳機能修飾によって、既報の通り、大脳皮質一次運動野の興奮性変化が認められた。その一方、それによって複数の姿勢課題パフォーマンスに直結するような行動学的変化がもたらされているかどうかについては未だ一定の結果を得ていない。これらの事象の関係の有無について妥当な結論に至るには、対象者数の確保が必要である。したがって、当初の目的と照らし合わせ、次年度以降も対象者の増員やプロトコルの精査により、本年度の課題を継続する必要があると判断されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず、本年度から着手した課題を継続する。具体的には、研究対象者の増員に加え、実験プロトコルの精査を行い、脳機能修飾とパフォーマンス変化との関連を明らかにする。次に、姿勢トレーニングや脳機能修飾の前後で、どのような脳機能が変化するのかについて、脳波や筋電図記録実験によって明らかにする予定である。これにより、トレーニングによる姿勢パフォーマンスの変化と脳機能の変化の間の相関と因果を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、当初予定していた学会出張が中止となった。次年度以降で、学会参加のための旅費に計上する予定である。
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Research Products
(5 results)