2022 Fiscal Year Research-status Report
プラグマティズムを理論的基盤としたシティズンシップ教育としての体育の可能性
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20K19603
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 徹 岡山大学, 教育学域, 助教 (30721550)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 民主主義的態度 / シティズンシップ / 戦後教育 / 野外教育 / 環境とのつながり / アフォーダンス / 生きられる世界の拡大 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、J.デューイを中心とする米国のプラグマティズムにおける教育論の観点から、体育(身体教育やスポーツ教育を含む)の中にシティズンシップ教育の可能性を探ることである。本研究で明らかにする課題は①シティズンシップ教育の定義、②シティズンシップ教育で育てようとする理想の市民像の姿、③シティズンシップ教育を通して理想とする市民を育成する際に体育はどのように貢献し得るのか、以上の3点である。 本研究では、はじめに研究課題②を明らかにするため、デューイの教育論を一つの基軸に考察を進めた。具体的な成果としては、デューイの教育論から読み解ける市民像として、自由の相互承認の感度に裏付けられた民主主義的態度を身につけた市民像を規定することができた。そしてその教育の場として、体育の近接領域である野外教育活動の有効性についても明らかにすることができた。次に、研究課題③を明らかにする上で、デューイの教育論が日本の体育に及ぼした影響について、特に戦後の民主体育に対する功罪を明らかにすることを一つの基軸に考察を進めた。具体的な成果としては、体育分野におけるデューイの教育論の矮小的解釈についての問題点を指摘し、デューイの教育論を議論する上での前提の定義を再構築することができた。また、シティズンシップ教育と体育との関係を検討するために、体育の独自性である身体育成の側面をシティズンシップ教育の中に位置づけることについても考察を進めた。これに加えて、従来のシティズンシップ教育に関する議論では、社会参加・政治参加の素養を育成するという側面に焦点が当てられているため、そこに身体への教育がどのような形で位置づくのかについて十分に言及されていない点にも着目し、シティズンシップ教育として育てようとする身体の様相の一つとして「環境とつながることのできる身体」という視点の必要性について研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、主に次の3点を明らかにすることを課題としている。①シティズンシップ教育の定義、②シティズンシップ教育で育てようとする理想の市民像の姿、③シティズンシップ教育を通して理想とする市民を育成する際に体育(身体教育やスポーツ教育を含む)はどのように貢献し得るのか。 本研究は3か年での実施を計画していたため、当初は1年目に研究課題①、2年目に研究課題②、3年目に研究課題③を明らかにすることを予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、当初計画していた資料収集や学会への参加について計画を変更せざるを得なかったため、2年目に計画していた研究課題②を1年目に実施し、3年目に計画していた研究課題③を2年目、および3年目に実施しながら、研究課題①については可能な限り遂行した。 その結果として、論文の作成および投稿は当初の計画よりも前倒しして実施することができたが、全体としては当初計画していた内容を十分に遂行するには至らなかった。特に、学会が中止になるなどの理由により、研究成果の公表が十分に行えていない点が課題である。そこで、研究計画を変更し次年度(4年目)への研究計画の延長申請の手続きを行った。4年目は学会での研究発表、および当初の計画にはなかった論文投稿を計画しており、すでに準備に着手している。 2022年度の研究成果公表の累計としては、国際学会誌への論文の掲載1点、大学紀要への論文の掲載1点、学会での口頭発表1回を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の3年目にあたる今年度に関しては、国際誌への論文掲載、大学紀要への論文掲載、学会での口頭発表など、研究全体としては一定の成果を上げることができた。しかし、当初の研究計画の全てを完了するまでには至らなかったため、研究計画を変更し、次年度(4年目)への研究計画の延長申請手続きを行った。次年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響も落ち着き、学会大会等も通常開催が予定されているため、そこでの成果発表、および学会誌への論文投稿を中心に研究を進めていく予定である。 本研究では以下に示す3点の研究課題を明らかにすることを予定していたが、研究課題①について十分に進めることができていない点、および研究全体を包括的にまとめる形での論文作成が完了していない点が課題として残っている。研究課題①シティズンシップ教育の定義、研究課題②シティズンシップ教育で育てようとする理想の市民像の姿、研究課題③シティズンシップ教育を通して理想とする市民を育成する際に体育(身体教育やスポーツ教育を含む)はどのように貢献し得るのか。したがって、過去3年間の研究成果に基づきつつ、まずは体育(身体教育やスポーツ教育を含む)の立場からのシティズンシップ教育の再定義を行い、次にこれまでの個々の研究成果を総括する形での論文の作成と投稿を行うことを今年度の研究の方向性として進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度も過去2年間と同様に新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、当初計画していた資料収集や学会参加のための出張が行えなかったため、その分の費用が次年度使用となった。ただし、次年度は社会情勢の改善が見込まれることから、出張のために使用予定であった交通宿泊費についても計画通りに使用できるものと考えている。次年度に参加予定の学会については、ほぼ全ての学会が現時点で対面開催の計画であるため、それらの学会に参加する際の費用として助成金の使用を計画している。また、学会誌への論文投稿を行う予定であり、その際に掛かる費用に対しても助成金を使用する計画である。
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Research Products
(3 results)